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植民地支配と敗戦に至る歴史を振り返り、反省する1日

 安倍晋三首相は15日の終戦記念日、靖国神社への参拝を見送るそうだ。(編集注:見送った)11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席する安倍首相は、中国の習近平国家主席との会談に意欲を見せており、一部には「一定の配慮」を評価するムキもあるが、はたしてそうか。

 

 安倍首相は昨年の終戦記念日にも私費で玉串料を納めただけで、参拝はしていない。今回も同様、自民党総裁特別補佐官の萩生田光一衆院議員を代理に差し向け、玉串料を納めることになっている。しかも、安倍内閣から新藤義孝総務相、稲田朋美行革担当相、古屋圭司国家公安委員長の3閣僚がすでに参拝を明言しており、つまり、日本政府の対応はこれまでと何も変わっていないのだ。こんなことでは中国どころか韓国との関係改善ですら道のりはなお険しい、と言わざるを得ない。

 

 9日にはミャンマーで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議に出席した岸田文雄外相が、中韓両国の外相と相次いで会談。日中外相会談は日本政府が尖閣諸島を国有化した直後の12年9月にニューヨークで行われて以来2年ぶり。もちろん、安倍内閣が発足して初めてとなる。

 

 会談後、岸田外相は記者団を前に「関係改善をいかに進めるかについて、ゆっくりと長時間、率直に意見を述べ合った」と語ったが、詳細は明らかにしなかった。つまり、11月の首脳会談実現に向けて語るほどの成果はないということ。

 

 また、約11カ月ぶりとなる韓国外相との会談では、岸田外相が冒頭「両国の間には困難問題が存在しているが、良好な日韓関係は相互の利益であり、アジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠だ」と述べ、関係改善に意欲を表明。一方、韓国外相は「歴史問題で日本側が真摯な態度で実践すれば、韓国国民の心が開かれ、両国の複雑に絡んだ糸も少しずつほぐすことができる」と述べ、安倍首相の靖国参拝や歴史認識の見直し発言の非を認め、誠意ある対応を求めた。会談後、岸田外相は関係改善が進んだとの認識を示したが、楽観が過ぎよう。

 

 終戦記念日となる8月15日をすべての戦争犠牲者に哀悼の意を表し、そして日本の植民地支配と敗戦に至る歴史を振り返り、反省する1日にしたいものだ。

 

(藤本順一)

写真:DAILY NOBORDER編集部