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解散総選挙の時期と安倍首相の長期政権戦略

「来年4 月の統一地方選に勝って、初めて日本を取り戻す戦いが完成する。さらに続く衆院選、参院選に結びつく大切な選挙だ。まなじりを決して戦い抜く」

 

 安倍晋三首相は5日、自民党本部に都道府県連幹部を集めた政策説明会でこう述べ、熱く激を飛ばした。

 

 4月の統一地方選はその後に予定される衆参国政選挙を占ういわば中間選挙的意味合いを持つ。戦績が振るわなければ、当然ながら政権の求心力低下を招き、秋の自民党総裁選挙で再選を目指す安倍首相の長期政権戦略に狂いが生じる。だから「まなじり決する」ほどに熱くもなるわけだ。

 

 それにしても安倍首相はなぜ、統一地方選後の国政選挙について参院選より先に衆院選を並べて言及したのであろうか。時系列に並べるならば16年12月任期満了を迎える衆院より7月に任期満了となる参院選が先にきてもよさそうなもの。あるいは安倍首相が無意識のうちに衆院の解散時期を示唆しているとすれば、少なくとも参院選後の解散総選挙の可能性を否定したことになろうか。

 

 もっとも過去、衆院選が任期満了で実施された例は少ない。解散権を握る首相は政権維持のために最も有利な解散時期を選び国民に信を問う。それからすれば、秋の臨時国会召集以降、安倍首相が解散総選挙に打って出る可能性は、今後日毎高まることになる。

 

 とはいえ、一部報道が指摘するような年内の解散や衆参同日選はまずない。同じ会合で安倍首相は「まだ景気の温かい風が全国津々浦々に届いていない。景気回復の風を皆さんに届けるのが私たちの使命だ」と述べ、秋以降、地方重視の政策に取り組む考えを強調した。

 

 つまりは今すぐには国民に信を問うべきアベノミクスの成果が充分ではないとの考えだ。

 

 また、7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定について安倍首相は「戦争に巻き込まるという批判は全く的外れだ。徴兵制導入は憲法違反だと国会で否定している」とも述べている。国民世論の大半が「説明不足」を指摘する中では、金看板の「積極平和主義」も名折れて、今後の安保法制の整備に支障をきたすことにもなろう。

 

 しかも政府が最優先にするべき来年度予算の年度内成立を投げ出すわけにもいかず、加えて4月の統一地方選に重なる総選挙は公明党が許さない。

 

 さらにはこれより先に目を転じれば10月には批判を浴びるだろう消費税率が10パーセントに引き上げるし、9月の自民党総裁選で再選される確証はない。

 

 かくして安倍首相は来年通常国会会期末、アベノミクスの成果と安保法制を仕上げてからの解散総選挙になるはず。9月の内閣改造、党役員人事を見れば、安倍首相の意図がよりはっきり見えてくるだろう。

 

(藤本順一)<t>

写真: Wikimedia Commonsより