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芸がない安倍首相の法人税減税

 先の通常国会、地域医療・介護総合確保推進法(医療介護法)の成立を受けて毎日新聞社は先月29日、東京・竹橋の毎日ホールで「いきいき生きる~地域包括ケアシステム構築にむけて」と題するシンポジウムを開催した。

 

 厚労省労健局担当課長による基調講演後に行われたパネルディスカッションで著者はコーディネーター役を務めた。パネラーは「健康寿命延伸都市の創造」を掲げ、超高齢化社会のあるべき街づくりにいち早く着手し、その先進性が注目を浴びる長野県松本市の菅野昭市長と東京大学高齢社会総合研究機構長の大方潤一郎教授、民間企業からは健康カラオケを提唱し、高齢者の介護予防、機能訓練をサポートする「DKエルダーシステム」を開発、全国の自治体や福祉施設で高い評価を得ている第一興商の戸塚圭介エルダー事業開発部長、ITC(情報通信技術)を応用した高齢者の見守り、地域参加を促す実証実験に取り組むNTT西日本ビジネス営業本部の山根浩顕地域CT推進部長の4人。いずれも各分野を代表する立場だ。

 

 医療介護の社会保障費の肥大化に歯止めをかけつつ、高齢者の生活ニーズに合わせた地域社会を築くための方策を話し合う。産学官が垣根を取っ払い知恵と経験を結集させたかつてない意欲的なシンポジウムである。

 

 定員150名のところ220名が会場に詰めかけ、パネラーの一言一句に真剣な眼差しで聞き入っていたのが印象的だった。多くは全国都道府県、市町村で実際に福祉政策の担当者である。

 

 医療介護法が成立したことでこれまで全国一律サービスだった「要支援1~2」を対象とした訪問・通所介護は27年4月から段階的に市町村に移管されることになる。

 

 医療介護サービスの地域格差拡大が懸念されているところだが、そうならないためには従来の福祉政策の枠を越えた連携が不可欠だ。政府行政には大胆な規制緩和を求めたい。

 

 加えて言えば、今年4月の消費税率を8パーセントに引き上げ、続く来年10月には10パーセントへの再引き上げが予定されている。

 

 国民に我慢と負担を強いる一方、企業法人税を一律に引き下げるのは度がすぎよう。税率引き下げを頭から否定するつもりはないが、安倍政権は秋の臨時国会で「ふるさと創生」を最優先課題に掲げている。そうであれば、せめて地域社会への貢献度に応じて税率をスライドさせてはどうだろう。ぜひ、検討していただきたい。

 

(藤本順一)

写真:首相官邸HPより