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「仁志田市長はやりたい放題だ!」 住民の怒り噴出した市議会報告会~伊達市霊山町小国地区

「高線量の小国を差別するな」「市議会のチェック機能が働いていない」−−−。

 7月25日夜に開かれた福島県伊達市の市議会報告会で、住民の怒りが爆発した。原発事故以降、特定避難勧奨地点の戸別指定・早期解除、汚染の放置と、被曝回避に消極的な行政に翻弄され続けてきた霊山町小国地区。住民は怒号でなく、切実な危機感を市議らにぶつけた。「仁志田市長は言いたい放題、やりたい放題ではないか」

 

【2年間で8割超減額された予算】

 「われわれは、除染が完全に終わったとは思っていないですよ」

 それまで市議会側の報告を黙って聞いていた住民が、誰ともなく口を開いた。伊達市の2014年度一般会計予算のうち、「放射能対策事業」は41億1873万1000円。昨年度の164億5107万円と比べると75%の大幅減。一昨年度(238億9254万円)との比較では、実に83%近くも減額された。これは、放射線低減対策に対する行政の意思の表れであり、来年度はさらに規模が縮小されることが予想される。市議が淡々と報告書を読み上げたことが拍車をかけ、参加した住民らは堰を切ったように声をあげた。

 「いまだに放射線量が高いのに、なぜ75%も減額したのか不思議でならない。むしろ増額しても良いくらい。いったい何を考えているのか」「仁志田(昇司)市長は、市内の放射線量を0.23μSv/h以下にするのはキツいと考えているようだ。その5-6倍でも健康には影響ないとまで言っていると聞くが、われわれ住民はこういう放射線量の高い地域に住んでいるだけでも苦痛なんですよ。低線量被曝について良く分かっていないのではないか」

 相次ぐ声に、市議の一人は「議会は0.23μSv/hを(除染の基準として)堅持するべきだと考えています。Cエリア(年間積算放射線量1mSv超)のみならずBエリア(同5mSv超)も除染を行うよう、7月23日に執行部に申し入れました」と答えるのが精一杯。「除染に終わりはないというのがわれわれ市議会の考えです」。

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住民の怒りや不満が噴出した議会報告会。「仁志田市長は言いたい放題、やりたい放題。市議会のチェック機能が働いていないからではないか」という住民の言葉に、市議らは汗を拭うしかなかった=小国地区交流館

 

【「小国をのけ者にしないで」】

 議会報告会は7月24、25の二日間にわたり、市内10カ所で開催。伊達市でも特に汚染の酷い小国地区(市の除染区分ではAエリア)では、各会派から5人の議員が出席した。

 2月に開かれた臨時市議会から3月定例会で可決された予算の概要、条例改正、人事。6月定例会で可決された補正予算の概要や人事案件などが報告された。6月議会で可決された一般会計補正予算(総額約339億円)のうち、放射能対策事業としては、あんぽ柿の生産者が実施するモニタリング検査費用を補助するための391万円、風評被害対策事業として、生産者と消費者の交流などを行うための675万円、首都圏に住んでいる消費者を招こうと「だてな暮らし体験ツアー」に224万円が計上された。
 会場となった小国地区交流館(霊山町上小国字腰巻)の敷地内に設置されていたモニタリングポストは、0.3μSv/h前後を示していたが、近くの県道51号線沿いでは手元の線量計は0.4μSv/hを超し、上小国川の遊歩道では0.7μSv/hを超す個所もあった。報告会でも、出席した市議から「市当局は『A、Bエリアの除染は終了した』とのスタンスだが、自主的測った数値を見ても、まだまだ放射線量が高いですね」という声が漏れたほどだ。
 上小国川には、震災前から浚渫(しゅんせつ)工事を行う計画があった。川底の土砂が大量に堆積し、台風などの際に増水して危険だからだ。しかし、原発事故により工事は無期限の延期。高濃度に汚染された土砂は放置されたままだ。「軽く1万ベクレルは超しているのではないか」と住民の1人は、河川の氾濫で汚染が拡散されることを憂慮する。
 小国地区は上水道の整備が遅れており、井戸水を飲み水として使っている世帯が少なくない。唯一、参加した女性が「井戸水が汚染されているのではないかという不安がある。平等に上水道を整備して欲しい」と、当たり前の願いを口にしたが、現段階では地区の全戸に上水道が整備される目途は立っていない。内部被曝の不安を抱えたまま、井戸水を飲み続けざるを得ないのが実情なのだ。

「差別しないで欲しい。なぜ小国地区だけをのけ者にするんですか」

 女性の言葉に、市中心部ばかりに目を向ける仁志田市長はどう答えるのか。

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伊達市が「除染は終わった」と公言する小国地区。1.0μSv/hを超す個所も珍しくない。

 

【市議会はチェック機能を果たせ】

 報告会に参加した住民は15人程度にとどまった。しかし、これは無関心ではなく住民の怒りの表れだという。「何人か一緒に行こうと誘ったんだ。何て言われたと思う?『あんな奴らに何を言っても無駄だ。一番大変な時に小国に来なかったじゃないか』ですよ。特定避難勧奨地点の指定や解除も、丁寧な説明はなかった。俺たちは宅配便の荷物じゃないんだ。紙切れ一枚であっち行けこっち行けはないだろう。今後はもっと地域の声を聴いて欲しい」。参加者の一人が市議らに怒りをぶつけるように言った。

 別の男性も続いた。

「仁志田市長の『年間数mSvでも大丈夫』なんて、とんでもない発言ですよ。本来なら議会が荒れるような事態。市長が言いたい放題、やりたい放題できているのは、市議会が持つチェック機能が果たされていないからではないですか」
 ある農家は「遊びに来た孫に言われたよ。『じいちゃん、毒の入ったものを作っているのかい?』ってね。市役所はきれいごとばかりだ」。別の生産者も「うちの農地は1万8000ベクレル。向こう30年間、作付けさせないよう指示を出すべきだったんだ。それを作り続けないと補償されないなんて…。そういったことを追及するのが市議会じゃないのか」と市議らに迫った。
 21時を過ぎ、発言の止まらない住民らをなだめるようにして報告会は終了した。冷房のない、1台の扇風機だけが回る室内。市議らが流した汗の量だけ、住民の怒りや不安がある。原発事故から3年。高濃度汚染の中での暮らしを強いられている人々にとって、原発事故は現在進行形なのだ。

 

(鈴木博喜)<t>