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食あたりが心配なアベノミクス

「財政再建のためには、あと2パーセントの増税はやらないといけない。我々は約束したことを実行し、多くの信任を得ている。仮に苦い薬であっても、将来が良くなるという確信のもと、国民の信頼を得たい」

 

 麻生太郎財務相は22日の講演でこう述べ、今秋にも判断が迫られる消費税率10パーセント引き上げの必要性を強調した。

 

 是非もないが、問題は経済状況がそれを許すかどうかだ。

 

 引き上げの判断については同じ日、自民党の高市早苗政調会長が党政調全体会議で7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が発表される11月17日を念頭に「11月下旬にはだいたい見通しが立つ」と述べている。

 

 内閣府はこの日、14年度GDP成長率見通しを前年比実質で1.4パーセント、名目で2.8パーセント程度とする試算を経済財政諮問会議に提出。1月に閣議決定した政府経済見通しの実質1.4パーセントを下方修正している。

 

 また、先に甘利明経済財政担当相が示した7月の月例経済報告では基調判断こそ「穏やかな回復基調が続いており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の判断も和らぎつつある」として6か月ぶりに上方修正したものの、内実は設備投資や住宅建設、鉱工業生産など内需の主役はいずれも弱含みの判断だ。

 

 しかし、だからといって税率引き上げを見送れば、安倍政権が進めてきた経済成長戦略の否定につながるばかりか財政再建路線の放棄を意味し、市場の信頼を失うことにもなろう。

 

 秋の臨時国会、安倍晋三首相は「地方創生と女性の活躍」を最優先課題に取り組むそうだ。

 

 具体的には官公庁の物品購入などに地方のベンチャー企業受注枠を設けるための官公需法や特産品の開発・販路開拓を財政支援するための中小企業地域資源活用促進法の改正など。「女性の活躍」では中央官庁や地方自治体、民間企業に女性幹部登用の行動計画策定を求める新法制定など。いずれもけっこうな試みだが経済指標を押し上げるほどのインパクトはない。アベノミクスもそろそろ賞味期限切れか。食あたりしないよう気をつけたい。

 

(藤本順一)<t>

写真:首相官邸HPより