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ワールドカップ2014優勝のドイツの自制した報道

 2014年のワールドカップ・サッカーはヨーロッパのサッカー強国ドイツが優勝した。そのドイツの公共放送ZDFはじめ一般メディアの常に“自制した”、というか“落ち着いた”報道ぶりが印象に残った。

 日本のメディアが連日大騒ぎしたのとは雲泥の差であった。

 

 あくまでも筆者が確認した限りだが、ZDFが夕方のニュースでワールドカップをトップで厚めに報じたのは(時差のあったのかも知れないが、)期間中2日だけ。優勝の日と翌日選手団が帰国した日だった。

 

 優勝した日の夕方のニュースは試合、表彰式、その後の選手たちの表情、インタビューなどをガウク大統領とメルケル首相の大喜びの瞬間などを交えながらテンポ良く見せながら5分余りのリポートだった。その後ウクライナ、パレスチナ紛争収束への外交努力などのニュースを報じた後、準優勝のアルゼンチン選手団が帰国して、人々に健闘をたたえられる光景が報道されていた。

 

 ドイツ各地の反応といえばベルリンの大画面の前に集まった人たちの興奮ぶりと、スマートフォンで試合経過を知った路面電車運転士へのインタビューだけだった。

 

 NHKなど日本のテレビ局が、選手団がブラジルに出発する前から予選で敗退するまで、選手の地元や所縁の町の人々の動きを、インタビューを交えながら連日長々と報道したのと比べると、客観・冷静と言えるほど自制し、落ち着いた報道ぶりだった。

 

 サッカー解説者もドイツ選手と、相手国の選手たちの特徴、得手不得手などを短く客観的に論じるのが常だった。

 

 国営国際放送DWは決勝戦の前、ドイツが勝利する条件、敗れる条件、の双方を比較検証していた。そこには楽観的な論調でもなく悲観的なものでもない。客観性を常に維持していた、との印象を受ける。

 

 優勝候補の筆頭に上げられていた地元ブラジルが準決勝で敗れた後、ドイツの選手たちがブラジルの選手たちと抱き合って健闘を祝福していた。この光景はドイツのテレビ局だけでなくCNN国際放送もしっかりと報じていた。

 

 この光景は、女子ワールドカップ・サッカーの日本・フランス戦で勝利した日本の宮間選手が泣き崩れるフランスの選手の前に座って慰め励ます場面と思わせた。

 

 勝てば喜びが溢れ、負ければ涙を流す者もいるが、試合が終われば全力を尽くして戦った同士。共に讃えあう、フェアプレーの精神、というか選手の間の共感・連帯がドイツとブラジル、それにアルゼンチンの選手たちの交流の画面から感じられた。

 

 日本でも“礼”に始まり“礼”に終わる、相撲、柔道、剣道などの原点と共通するものを見てしまう。

 

 余談だが、優勝したドイツの選手団、帰国便のルフトハンザはエコノミークラスだった。

 

(大貫康雄)

PHOTO by Danilo Borges/Portal da Copa copa2014.gov.br Licença Creative Commons Atribuição 3.0 Brasil ([1]) [CC-BY-3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/3.0)], via Wikimedia Commons

 

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