南相馬の玄米に放射性物質が直接付着:その3「球状セシウム粒子(仮称:セシウムボールCs ball)」
農水省の資料「南相馬市における玄米の全袋調査結果と基準値超過の発生要因調査」を研究者数名に見せ、意見を聞いた。
「1地域のイメージングプレートだけでは詳細がわからない。もっと詳細なデータが無ければ、何も評価できない。例えば、付着していた放射性物質の核種の組成などはわからないのか?」
イメージングプレートを実際に見せてもらい、説明を受けた。
簡単に言うと、日光写真のようなものである。プレートの上に、検体を載せ、時間をおいてからプレートを読み取ると、放射性物質が付着の分布がわかる、というものだそうだ。
原理としては、放射線エネルギーが蓄積されたあと、あとで熱や光などの励起により蛍光を発する現象を応用している。
別の研究者にはこのようなコメントを頂いた。
「高輝度のx線があれば分析できるのだが、イメージングプレートだけだと判断は難しい。関係する結果を送る。猛烈なヒントになるはず。」と。
送られてきた資料が含まれているものは下記に公開されていた。(送られてきたのはドラフト版だったので、若干の言葉の違いはあったが)2014年3月16日の福島第一原子力発電所事故由来放射性物質調査研究 分野横断ワークショップにおいて発表された資料である。
http://www.ied.tsukuba.ac.jp/hydrogeo/alltsukuba/documents/20140316WS/20140316WS_group01.pdf
研究者から示唆されたのは、14ページの「球状セシウム粒子」の部分であった。
これによると、PM2.5の粒径に相当する「球状セシウム粒子(仮称セシウムボール)」なるものが環境中に存在するという。
福島第一原発事故の初期に放出されたセシウムの主要な形態が、球状セシウム粒子だと推定される。この球状セシウム粒子は、環境中や生体中で長期にわたり変化しないと推定され、環境影響・生体影響も不明なため、さらに検討する必要がある、とのことであった。
この「球状セシウム粒子」を調査している研究者は、次の論文も用意されており、そこそこインパクトのあるもので、今回の疑問にある程度回答を出せるのではないか、とのことであった。なので継続して取材する。
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(補足ではあるが、この「球状セシウム粒子」の「生体影響も不明」という部分は非常に気になる。被ばくによる鼻血問題、口内炎、皮膚の疾患など、微量なセシウムボールに反応している可能性もあるのではないか。とにかく、放射性物質にまつわる研究は、まだまだ未解明な部分が大きいのである。)
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この南相馬の直接付着の問題点をまとめると、
1.原発事故から2年後の2013年に、20km以上離れた旧太田村で、なぜ放射性物質の直接付着が見られたか。
→1-1.環境中の球状セシウム粒子などの舞い上がりか?
→1-2.福島第一原発から何らかの放出があったか?
→1-3.原因が何にしろ、その付近の住民への対策は十分か?
2.原子炉建屋の瓦礫撤去についての問題点。
→2-1.瓦礫撤去の際のダスト飛散防止対策とともに事前告知は必要ではないか。
→2-2.今後の1号機建屋のカバー撤去などの対策、事前告知は十分か。
→2-3.原子炉建屋内の瓦礫は、爆発時にどういう力がどこに加わったかなどの現場検証が済んでいるか。
3.球状セシウム粒子について。
→3-1.環境中にどのように存在しているのか、除染にどのように影響するのか
→3-2.環境影響・生体影響はどのようなものか
→3-3.環境中の球状セシウム粒子が舞い上がり付着する可能性、福島第一原発に事故直後に降り積もった球状セシウム粒子の再飛散はあるのか
福島第一原発事故は現在進行形であり、現在も福島第一原発から放射性物質が放出されている状況なのである。
そしてその原因はほとんど解明されておらず、対策は汚染水が漏れてから、大気中に放射性物質が放出されてから、という後手後手なものである。
せめて、作業員と住民の方々の最大限の防護措置を要望する。
(おしどりマコ)<t>