南相馬の玄米に放射性物質が直接付着:その2「3号機の汚染ダスト」
2013年8月に何があったか。
7月から3号機の原子炉オペレーティングフロアから湯気がしょっちゅう出ていた。 (これは原発事故後から続いており、2014年7月現在も続いている。)
■8月12日は、免震重要棟前の連続ダストモニタの高高警報がなり、作業員10人に放射性物質が付着し身体汚染される事故があった。 (東京電力)
■8月19日も、同じく免震重要棟前の連続ダストモニタの高高警報が鳴り、作業員2人が身体汚染される事故があった。(東京電力)
この汚染の原因は何か。
当時は、熱中症対策で撒いているミストの汚染、免震重要棟近くの駐車場に置いてある高濃度汚染車からの舞い上がり、1号機、2号機など様々な可能性が上げられていた。
しかし、現場の取材を重ねるにつれ、筆者は3号機のガレキ撤去について疑念をいだく。作業員に取材すると、ガレキ撤去する際、放射性物質を含んだダストが舞い上がり、「ちょっとしたプルーム」になるくらい、近隣を汚染しているという。
原発事故後、一切手をつけていなかったエリアのガレキを撤去するということは、 当時降り積もった爆発時の放射性物質がもう一度舞い上がるということである。 あまりにも高濃度汚染のため、ロボットか、機器を遠隔操作して汚染ガレキを撤去している。
■福島第一原子力発電所 第3号機原子炉建屋上部瓦礫撤去工事 遠隔操作室について (東京電力)
■福島第一原子力発電所 3号機原子炉建屋1階 南西エリアのガレキ等障害物撤去について (東京電力)
2013年8月、この期間は3号機のガレキ撤去にあたっていた。 東京電力は、大まかなスケジュールしか発表せず、それもガレキ撤去が終わった後の事後報告であった。(筆者は、ガレキ撤去にあたっていた作業員から別の懸念を聞いて取材していた。)
それは、ガレキ撤去を発表せず、東京電力が片付けることで、現場検証ができなくなるのでは、という懸念である。 「原発が爆発した後、そのままの状態で残っていた建屋をどんどん片付けている。 どの構造物がどこに落ちたのか。どういう力が加わったのか。 これは重要な情報ではないのだろうか。 普通、爆発事象などは、消防暑や警察、第三者が入り、どういう爆発があったか現場検証をする。 でも、事故後の原発建屋は人間が入れないため、第三者の現場検証が行われていない。 このまま、ガレキをどんどん撤去していっていいのだろうか?」
この声を聞いてからガレキ撤去スケジュール、現場検証の取材をしていた。 現場検証について、東京電力は「ガレキ撤去前の写真や動画を保存しているので問題ない」と回答した。 つまり、事故を起こした企業の自己申告の情報しか残っていないのである。)
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では10人が汚染された8月12日のガレキ撤去スケジュールはどのようなものであったか。
3号機のオペレーティングフロアに落ちていた天井クレーンガーターを切断して撤去した日なのである。それを知ったとき、筆者はアッと思った。 天井クレーンガーターは、もっとも汚染されているものの一つだからだ。 3号機のオペフロから湯気が出ていた件で取材メモの一部を紹介する。
■福島第一原子力発電所3号機5階 シールドプラグ周辺の雰囲気線量測定について(東京電力)
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簡単に説明すると、3号機の原子炉の上に、シールドプラグという蓋がある。 そのシールドプラグの端から、不定期に湯気が出ている。 シールドプラグは大きな構造物で、3つの部分に分かれている。(円を縦に3分割した構造) そのシールドプラグの上に、天井クレーンガーターが落ちてきてそのまま乗っかっている。
(質疑抜粋)
おしどりマコ: このオペフロのシールドプラグの周辺の雰囲気線量で、シールドプラグが3つの部分に分かれているということで、この6~15のラインは継ぎ目の一つですか。
東京電力尾野: そうです。
おしどりマコ: では、クレーンガーターと重なっていますが7~14のラインも継ぎ目の一つですか。
東京電力尾野: ここは、厳密に言うとちょっとずれてるのではないかと思いますが、近いところと思っていただいて良いかと思います。
おしどりマコ : では、毎時1sV以上の線量が高いところは、このシールドプラグの継ぎ目のラインにちょうど重なっているということはどう評価されますか。
東京電力尾野: (抜粋)格納容器の中で、たくさん蒸気が発生してるような爆発があった直後のような時ございますけれども、こうしたシールドプラグの付近から蒸気が出てる、ということも映像的にみてございますので、ですからこうした隙間というのが、かつて蒸気の通り道であったということは想像にかたくないというふうに思ってございます。 ですから、その関係で継ぎ目の部分というのは、通ったあとでしょうから、その当時よごれがついたという事は、あっておかしくないことというふうに思います。 ただ、この辺全体が瓦礫に埋まった中で、蒸気が出たり汚れたりしておりますから、それが最終的にどういうつけ方になっているのかというところまで、判断していくというのはちょっと難しいかなと思います。
おしどりマコ: すいません、確認ですが、爆発直後はこの3号機のシールドプラグの継ぎ目の付近から蒸気が出ていたということなんですね。 東京電力尾野 そういうようなことが映像的に見えております。
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つまり、8月12日に撤去された天井クレーンガーターは、原発事故以降、高濃度汚染されたものだったのである。 そのクレーンガーターを撤去した時刻、風向きから、8月12日の免震重要棟の連続ダストモニタの警報は3号機由来であると考えられている。 8月19日の警報についても、12日と同様の風向き、各号機の作業内容から推測して、3号機原子炉建屋上部の瓦礫撤去によるダストの舞い上がりが原因とされている。
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その後、4号機の使用済み燃料プールからの燃料棒取り出し計画が施工される。
4号機の使用済み燃料プールの作業チームに取材すると、「4号機由来の被ばくより、3号機由来の被ばくの寄与のほうが大きい。3号機でガレキを撤去するたび、高濃度のダストが舞い上がり、風向きによって4号機に飛んでくる。なので被曝低減対策として、3号機と4号機の間にフェンスを作ってほしい、と要望した。それで舞い上がったダストが直接4号機のほうに飛んでくるのを防いでいる。」とのことであった。
「ガレキ撤去による汚染ダストの舞い上がりは、ちょっとしたプルームになる。風下にいけば、汚染されるだろう。どこまでそれが届いているのか。現在は、20km圏内までわりと人が入っている。せめて、汚染ダストが舞い上がる可能性のある作業は事前にアナウンスするべきでは…」とも言っていた。
この農水省の資料を手に入れてから、筆者は、東京電力に再び繰り返し取材した。 2013年8月の汚染ダストが舞い上がった事象で、どこまで飛散したか評価しているか、と質問の回答は「東京電力として敷地内のモニタリングポストまでしか把握していない。 どこまで飛散したかの評価はしていない。近隣の市町村のモニタリングポストの値に上昇が見られたということは聞いている」というものであった。
そこでも再三、筆者は「近隣のモニタリングポストを上昇させるような作業をするときは事前告知をしてほしい」と要望した。
しかし回答は「ダスト飛散防止対策をとる、事前告知は検討する」であった。
(その3に続く)
(おしどりマコ)<t>