ガン患者に違法行為を繰り返した島根県警!【松江介護詐欺事件・第7弾】
昨年9月から今年1月にかけて都合3回、島根県警に詐欺容疑で逮捕・一部起訴された島根県松江市の田窪紘子さん(73)の松江介護詐欺事件で、松江地裁は今年6月、懲役2年6月、執行猶予5年の有罪判決をくだした。
当初は判決を受け入れようと思っていた紘子さんだが、「執行猶予5年」を不服として、あえて控訴の道を選んだ。裁判の過程で検察側が主張する「巨額(約1000万円)詐欺事件」の主張はことごとく崩され、実質被害金額は「52万円」と認定された。にもかかわらず、執行猶予としては最長の「5年」、つまり「反省が足りない」とされたのだ。それがどうしても納得いかなかったというのが控訴の主な理由だが、それだけではない。
前回リポートでも書いたように、紘子さんは勾留中に大腸ガンを発症し、緊急手術が必要な状態に陥った。ところが島根県警と松江地検は十分な治療を受けさせず、病院から無理やり退院させ、病状を悪化させるという非人間的な人道上、人権上も極めて問題のある扱いをしていたのだ。
「病院は引き続き入院加療が必要とのことでしたが、警察と検察はそれを認めようとしなかった。退院後しばらくは留置場からの通院でした。手術した傷口が十分にふさがらず、化膿していたからです。しかし、そのうち通院もさせてくれなくなりました。その代りに、婦警さんが傷口のガーゼの交換をしてくれるようになったのですが……」
と、紘子さんは振り返る。
手術創のガーゼの交換は、医療行為である。厚生労働省は2005年にガーゼ交換についてこのような解釈を打ち出している。
<軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について、専門的な判断や技術を必要としない処置をすること(汚物で汚れたガーゼの交換を含む。)>
簡単なものなら、医療行為に該当しない。だが、紘子さんの場合、ガンの手術の傷口で、おまけに化膿していた。事実、通院してガーゼの交換をしていたのだ。軽微であるわけがない。しかも紘子さんは72歳と高齢だ。ちょっとしたミスでも万が一のことが起きると想定される状況だった。
島根県警の婦警がガーゼを交換した行為は、医師法違反にもつながりかねない、人の命にもかかわる問題である。
法で取り締まる側の警察が、それを守れない。いったい、罪に問われなければならないのは、どちらなのか?
(つづく)
【松江介護詐欺事件】
2012年秋、島根県松江市の介護事業会社、いずみの田窪紘子被告が逮捕、起訴された。松江市に介護事業の得られる生活支援給付金を不当に請求し、余分に得たという詐欺容疑。しかし、いずみは年商8000万円ほどあり、詐取した金額が約15000円と不自然なもの。紘子被告は、否認を続け争っている。ゆえに、ガンで緊急手術を余儀なくされたにもかかわらず、ずっと拘束されたままの状態が続いている。
(今西憲之)
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