集団的自衛権行使容認の閣議決定に、宗教界が批判や懸念
憲法解釈の変更による、安倍内閣の集団的自衛権行使容認決定については、宗教界からも強い批判が出されている。
新宗教団体の一つ、立正佼成会が集団的自衛権行使容認問題で、この4月強く懸念する見解を発表したことは先に述べた。それからわずか2カ月で安倍自民・公明の連立政権が行使容認の閣議決定、関連法整備に取りかかることを決定した。
立正佼成会は7月1日、改めて安倍政権の姿勢を批判する緊急声明を発表した。
声明では関連法整備をすることに対し、“集団的自衛権として武力の行使を容認することは『戦争』そのものを容認するもの”であり“時の一内閣の憲法解釈の変更”によって、こうした“国家行為を容認することは到底許されるものではない”と断じた。
続けて声明では、猜疑心がなければ戦争は起きえない。信頼こそ人間社会成立の基礎となると続ける。
そして過去、人類の歴史において諸国民の間での疑義、不信、猜疑によってしばしば戦争が引き起こされた歴史的事実を挙げ、“今こそ(集団的自衛権の行使ではなく)互いの不信を払しょくし、確かな信頼を醸成していく努力することが重要である“と述べている。
この緊急声明を立正佼成会は総理官邸に菅官房長官を訪ね、直接手渡している。
立正佼成会は先に述べたように、宗派を超えた協力・世界各国の宗教団体とも協力して平和を模索・構築する活動を続けている団体。一政党の思惑に左右される団体では無い。
また宗教界では、日本カトリック正義と平和協議会、日本バプティスト連盟理事会、日本キリスト教婦人矯風会などキリスト教の団体も集団的自衛権行使容認の閣議決定に反対の声を上げた。
また全日本仏教会は7月1日、齋藤聖明理(あきさと)事長名で「深い憂慮」を表明する談話を出した。この談話で全日本仏教会は、集団的自衛権行使を容認していけば、“日本人が海外で人を殺し殺される、という事態が起こり得る”可能性があると指摘。今回の閣議決定には“人間の知恵の『闇』を垣間見るがごとき、深い憂慮と危惧の念を感じ得ません”と強い懸念を示している。
全日本仏教会は1900年(明治33年)、信仰の自由の基本を踏まえて国家の宗教統制に反対した「仏教懇話会」を元に発展。戦後は広く仏教会各宗派が揃う団体となり宗教界で信条の自由や社会の民主化に向けて積極的な活動を進めている。
(大貫康雄)
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