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こっそり変更されていた「定時降下物」測定~〝不検出〟増えたと県庁。それでも専門家は「マスクを」

 多くの福島県民が知らぬ間に、測定方法が変更されていた。原発事故以降、日々、公表されていた「定時降下物」。4月から雨が降った日だけに測定・公表されることになった。「従来通り、毎日測定を」と求める声に、数値が下がったと強調する県職員。マスク着用の注意喚起文も削られた。放射線の専門家は言う。「舞い上がった放射性物質を取り込まないよう、やはり子どもたちにはマスクをして欲しい」
 
【消えた注意喚起の文言】
 突然の変更だった。
 原発事故以降、毎日発表されていた「定時降下物」。福島県原子力センター福島支所(福島市方木田)の2階屋上(地上から約8メートル)に設置された容器(約2000㎠)を毎日、午前9時に回収。ゲルマニウム半導体検出器を使い、容器の底に張った少量の水に降り注いだ雨水や粉じんを約1時間かけて測定。放射性ヨウ素や放射性セシウムの濃度を公表していた。
 測定結果には、「地面が乾燥している時に強い風が吹くと、じん埃が地表面から舞い上がりやすくなります」「被ばく線量の低減や一般的なじん埃の吸入量低減の観点から、土ぼこりが舞うような風の強い日に外出する際は、マスクの使用や帰宅後のうがいなどに心がけましょう」などと注意喚起の文章も添えられていた。
 それが今年4月からは、雨が降った日にだけ測定し、結果が公表されることになっていた。従来より大きい容器(約5000㎠)に溜まった雨水をやはり午前9時に回収。約1日かけて測定する。今月は、これまでに7回測定結果が公表されているが、6日から9日にかけて採取された雨水から1.31メガベクレル/㎢の放射性セシウム137が検出された以外は、すべて不検出だった。
「最近はND(不検出)が増えてきて、徐々に濃度が下がっている傾向にありました。検出されたとしてもかなり低い。そこで、部内で話し合って全国統一の「環境放射能水準調査」に準じるよう変更したのです。雨は空気中に浮遊している物質を落とす作用もありますから」
福島県生活環境部・放射線監視室の担当者は説明する。変更によって、測定の下限値を1ベクレル/㎡以下に下げることができたというが、同時に、注意喚起の文言も無くなった。県はマスク着用を呼びかけなくなった。
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「定時降下物」は4月から雨が降った日だけ公表されることになった。県庁には苦情の電話もあったという=福島市方木田
 
【「毎日、測定して欲しい」と電話も】
 原発事故の収束には程遠い状況にあって、情報公開の観点から問題はなかったのか。測定方法の変更が県民に周知されることはなかった。測定結果も、県ホームページの刷新とともに探しにくくなった。
「『不検出だとしても毎日、測定して公表してほしい』や『県はなぜ、マスク着用を推奨しなくなったのか』など、お叱りの電話がありました。たしかに情報の出し方、情報公開という意味では不十分でした。不信感を抱かれてしまったことは反省しています」と担当者。現在、大気中の放射性物質濃度をどのように分かりやすく県民に伝えるか、整理しているという。
 たしかに数値は圧倒的に下がっている。
 2011年3月27日から28日の測定では、放射性ヨウ素が2万3000メガベクレル/㎢、放射性セシウム134は不検出、137が790メガベクレル/㎢だった。2012年3月は、最も多い日で放射性セシウムが合算で233.2メガベクレル/㎢、2013年3月は同162.5メガベクレル/㎢。今年3月は同50メガベクレル/㎢だった(放射性ヨウ素は不検出)。
 放射線監視室の担当者も「日常生活という観点では、かなり低くなったと思います。呼吸による被曝の危険性はかなり低くなったと考えています」と話す。「もちろん、数値が低いから良いというわけではありませんし、風の強い日はマスクを着用することで取り込むことを抑えられます」としながらも、本音ものぞかせた。「国からは『必ずマスクをするように』という指示は出ていないので…」。
 さらに、「一つの目安として」と食品検査の基準値を挙げた。「最近の定時降下物は、成人男性が全量を吸い込んだとしても0.07ベクレル/㎡程度。単純比較はできないが、食品の基準値と比べても圧倒的に低いですよね」。
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福島県原子力センター福島支所では大気浮遊じんも測定されている
 
【子どもの周囲に点在する「非密封線源」】
 しかし、子どもたちを取り巻く被曝の危険性は、残念ながら大気中の放射性物質ばかりではないのが実情なのだ。
「確かに大気中の濃度としては下がっているでしょう。それは事実だと思います。でも、今の福島は四方八方から放射線が飛んでくる状況です。それも密封線源ではなく非密封線源。それを誰も話題にしないんですよ。あくまで大気中の放射性物質濃度が下がったというだけで、マスクが不要であるということではないと思いますよ」
 非破壊検査業務や放射線測定の販売・校正をする会社の男性社員は、マスクの必要性を強調する。
 福島第一原発から60km離れた中通りには、事故から3年以上が経過した今も「ホットスポット」と呼ばれる放射線量の高い線源が点在する。男性は、ホットスポットを子どもたちが通過したり、その周辺で遊んだりする際、砂ぼこりなどと共に放射性物質を口や目などから取り込んでしまう危険性を重視しているという。
「今の中通りは、外部被曝を恐れるような状況ではないでしょう。問題は内部被曝です。内部被曝の恐ろしさは外部被曝の比じゃない。雨などで線源が湿っているうちはまだ良いですが、乾けば舞う恐れがある。子どもたちには、なるべくマスクを着用して欲しいですね」
 先の県職員も「安全だという認識を押し付けるつもりはない。心配であれば、ぜひマスクをして欲しい」と話した。
 夏休みが近づく。マスクの大切さを、改めて親子で考えたい。
 

(文と写真:鈴木博喜)<t>