法人減税と献金あっせん再開にみる新たな政財癒着の構図
政府・与党は今月まとめる経済財政運営の「骨太の方針」に法人税の実効税率の引き下げを明記する方向で調整に入った。安倍晋三首相の意向に沿ったものだ。
「グローバル経済の中で競争に打ち勝っていけるよう、法人税の構造を成長志向型に変える」
安倍晋三首相は3日、来賓として出席した経団連の定時総会のあいさつでこう述べた。
これに対してこの日、経団連新会長に選出された東レの榊原定征会長(71)は、就任のあいさつで「政治と経済は車の両輪。政治との連携を一段と強め、強い経済の実現に協力していく」と述べ、現状35パーセント程度の法人税実効税率を将来的にはOECD並みの25パーセントまで引き下げるよう強く求め、その見返りに長く途絶えていた自民党に対する「政治献金のあっせん」の再開に前向きな姿勢を見せている。
法人税の実効税率引き下げは、安倍政権の経済再生戦略の目玉だ。首尾よく企業の競争力が高まり、税収増につながればいいが、政府与党内には税収の落ち込みによる財政規律の乱れを危惧する声も根強く残る。
引き下げるにしても最低限、「恒久財源を確保し、(増減税が同額の)税収中立の中で実現する。単年度の税収の上振れを財源とすることは厳に慎むべきだ」と自民党税制調査会の野田毅会長はクギを刺す。
さらに言えば、恒久財源探しの矛先が配偶者控除の見直しなど、国民生活を圧迫するようなことがあってはならない。
厚労省の毎月勤労統計調査(速報)によると4月、一人当たりの現金給与総額に物価変動の影響を加味した実質賃金指数は、前年同月比で3・1パーセント下落、09年12月の4・3パーセント以来のマイナス幅だった。
現金給与総額から残業代などを差し引いた所定内給与は0・2%減で23か月連続減少している。消費税の引き上げに伴う物価の上昇に賃上げが追いついていない。
それでいて新たな負担を国民に強いるのであれば、これはもう、経済再生に名を借りた政財界の癒着である。
(藤本順一)<t>
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