無名の新人、共和党超大物に予備選で勝利
今年11月アメリカでは2年に一度の中間選挙が行われる。そのヴァージニア州第7選挙区での共和党予備選挙で、次期下院議長の本命候補とされていたカンター(Eric Cantor)院内総務が、地元ティー・パーティが支持する無名の大学教授ブラット(David Brat)氏に敗れる大番狂わせがあった。
選挙は水もの、ふたを開けてみないと判らないと言われるが、原因は投票を通して政治に参加し、自分と政見を同じくする候補を推すことが如何に重要かを改めて認識させた。
逆にいえば、逆境の中でも諦めず候補者・支持者ががんばれば、それなりの結果が出ることを示した。
共和党下院の院内総務カンター議員は2000年初当選して以来、連続7期当選。共和党の勝利が確実視される今年11月の中間選挙後、下院議長に推挙される筆頭候補と見られていた。
今回の予備選にカンター陣営は450万ドルの寄付を集め、対するブラット陣営は20万ドルだけ。カンター陣営は潤沢な資金に物を言わせ、地元のテレビ・コマーシャルを終始流し、至る所にポスターを張っていた。
“選挙資金の寄付も集まらない”、“これはと言った支援団体もない”、“知名度もない”などと、ブラット候補は選挙戦の不利を隠さなかった。
カンター議員の2年前前回の予備選挙では有効投票4万7000票の内79%を獲得し、本選では58%で余裕の当選だった。今回も共和党系世論調査会社の調査でカンター議員は優に過半数を獲得する勢いだった。
しかし結果は前回より遥かに多い有効投票6万3000票の内47.8%しか確保できず、ブラット氏に僅差で敗れた。
共和党だけでなくメディアもカンター議員の敗因を分析するが説明は出来ない。
ただ議員が、移民許可条件を緩くする法案への反対が充分でなく保守派支持者の不満を高めた、とか、次期下院議長共和党最有力候補とされ全国的に名を広めたい野心があって、地元の活動を疎かにしていた、などの指摘が出ている。
一方ブラット氏を支持したティー・パーティの活動家が町や村毎に活発な選挙活動を展開した結果、ブラット氏支持が思いのほか急伸した。終盤、カンター陣営が総動員体制を取ったが時すでに遅かった、と言われる。
ティー・パーティ活動家はメディアの取材に対し、“今の政治は哲学的な、基本的な問題を軽視し、既存勢力の争いになっている”、“政治を人々の手に取り戻す”、などと話している。
大方の予想を覆し、大番狂わせが起きたアメリカ・ヴァージニア州の下院選挙前の共和党予備選。共和党下院の次期指導者と目される候補が敗れ、国政に影響することが確実視されている。
選挙では有権者に真摯に訴えることと、より多くの有権者が権利を行使して投票することの重要さを改めて考えさせる。
(大貫康雄)
PHOTO by Gage Skidmore [CC-BY-SA-2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0)], via Wikimedia Commons