犬猫の殺処分ゼロを目指しまずは行動を「TOKYO ZERO」
『犬を殺すのは誰か』思わずドキッとするようなタイトルの本の解説を書いたことからすべては始まった。著者は雑誌アエラの記者だった太田匡彦さん。まず私が思い浮かべたのは「犬殺し」だった。かつて警察署の指導下で野良犬を殺処分していた業者のことで、今では侮蔑語として使われていない。当時は殺処分は狂犬病予防のためという大義名分があった。
その後さまざまな対策がとられ、国内では1950年代以降狂犬病の発生はない。それなのに今でも年間8万匹を超える犬が自治体に引き取られ、そのうち約4万5000匹が殺処分されている。平日毎日約200匹。愛犬家のひとりとしてなんとかしたいという思いから、太田さんを中心に動物愛護に関心の高い仲間たちと共に「TOKYO ZERO」というキャンペーンを立ち上げ5月に東京都庁で記者会見を開いた。
世界の注目を集めるオリンピックは、開催国の文化成熟度を示す機会でもある。東京も高い文化成熟度をアピールして2020年大会の招致に成功したが、動物愛護の観点からは前述の数字が示すように日本はまだまだ後進国だ。ぜひ2020年までに犬猫の殺処分をゼロにしたい。それは現代社会で失われつつある他者への思いやりを呼び起こすことや最近ビジネス界で叫ばれるダイバーシティ(多様性)にも繋がる。
ではどうすれば殺処分がなくなるのか。ドイツがいい例だ。ドイツには500カ所もの動物保護施設があり、保護された動物たちが自然あふれる広々として敷地内でゆったりと暮らしている。その98%に新たな飼い主が見つかり、残った動物も最後まで飼育施設で面倒を見てもらえるそうだ。その背景には国を挙げて動物を守る強い意思と行動があり、犬の飼い主には犬税が課せられている。ブリーダーや流通業者に対する規制も厳しく、徹底した情報公開が行われている。
少子高齢化が進む日本では、数年前から15歳未満の子供の数(1665万人、2012年)よりもペット犬猫の数(2128万頭)が上回るようになった。今やペットビジネスは成長産業と位置づけられ、儲けのためには犬の命を商品として扱う業者が跋扈している。商品価値がなくなれば殺処分というわけだ。吠える、高齢犬、転居など人間の身勝手な理由で犬を捨てる飼い主も後を絶たない。「犬の殺処分の問題を追うことは、人間社会の大きな理不尽に向き合うこーとだ」という太田氏の言葉は重い。みなさんもぜひ「TOKYO ZERO」に参加してください。
TOKYO ZERO キャンペーン
【コラム「世界の風を感じて」より】
Photo : Sleeping Pups (Wikimedia Commons/Author: Bev Sykes from Davis, CA, USA)