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中国の軍拡と同様に日本の右傾化も懸念されている。(藤本 順一)

安倍晋三首相は6日、欧州歴訪最後の訪問国となったベルギー・ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部の演説で、軍備増強を続ける中国を名指しで批判する一方、対中武器輸出で潤う欧州諸国に自制を促した。併せて集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈変更に理解を求め、「世界の平和のため、これまで以上に積極的な役割をはたす意思と能力がある」と述べ、安倍政権が目指す積極的平和外交をアピールした。

この中で安倍首相は、中国の軍事費が毎年10%以上伸び、この26年間で40倍に拡大したとして「我が国を含む国際社会の懸念事項だ。内訳が明らかにされない不透明な形で行われる」と訴え、同調を求めたが、欧州諸国からすれば中国の軍拡と同様、日本の右傾化も懸念されるところだろう。

しかも安倍首相は集団的自衛権の行使を可能にする理由として、日本領海域で同盟国の米軍が攻撃を受けたケースの他、PKO部隊の警護をあげているが、日本国内ですらコンセンサスを得られていないものを、既成事実のように語るのはいかがなものか。

安倍首相はまた、この日、パリで開催された経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会で基調講演を行い、「基本的な価値を共有する国々と公正なルールの下で競争が確保される大きな経済圏を作り上げていく。参加を望む国々を歓迎するが、そのためには新たな圭座愛秩序に賛同してもらう」とここでも名指しこそは避けたものの、知的財産権侵害など国際ルール違反を繰り返す中国を暗に批判した。つまるところ、軍事、経済両面で中国を孤立化、国際社会からの排除を促しているわけだ。これでは対中関係の改善は望むべくもない。

さらに基調講演で安倍首相は日本の経済再生の取り組みについて「日本はデフレから脱却しようとしている。経済再生、財政再建、社会保障改革の三つを同時に達成する」と述べ、法人税の実効税率の引き下げや医療分野での規制改革への取り組みにも言及。だが、これも日本国内の議論はこれからが本番だ。

ちなみにこの日、OECDは14年の日本の経済成長率を下方修正、7日の東京株式市場は大幅安となった。安倍首相が掲げる積極平和主義とアベノミクスの二枚看板もそろそろ描き換えが必要である。

【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】

Photo : Shinzo Abe at CSIS(Wikimedia Commons /Author:Ajswab)