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度が過ぎる積極的平和主義は国益を損なう(藤本 順一)

安倍晋三首相はこの連休、ドイツ、英国、ポルトガル、スペイン、フランス、ベルギーの欧州六カ国を歴訪中だ。

「欧州は世界の世論形成、秩序づくりに大きな影響力を持っている。日本の成長戦略や積極的平和主義を発信したい」出発前、安倍首相は外遊の目的をこう述べていた。

アベノミクスによる経済成長戦略と積極的平和主義は安倍首相の2枚看板だが、とりわけ今回は緊迫するウクライナ情勢について、対ロ制裁に及び腰な日本の立場に理解を求める一方、プーチン露大統領との蜜月関係をチラつかせながら、平和的解決を望むEU諸国との協調姿勢をアピールしたいところか。つまるところ、EUにもロシアにも嫌われたくないわけだ。

その上で中国の脅威を念頭に先の日米共同宣言に基づき、日本が東アジアの安全保障に主導的な役割を果たすことについて、EU諸国から支持を得ることができれば、安倍首相は万々歳だ。何より後半国会、集団的自衛権の行使容認に向けて弾みがつこう。

日本が集団的自衛権の行使容認に踏み切ることについては、東南アジア諸国の理解も不可欠だが、29日に小野寺五典防衛相と会談したマレーシアのナジブ首相は理解を示している。

また、この前日にはオバマ米大統領がフィリピンを訪問、「我々はアジア太平洋で指導的な役割を取り戻す」として米軍のフィリピン軍施設利用を認める新軍事協定を締結。まるで冷戦時代に逆戻りしたかのような対中脅威論の高まりとオバマ米大統領の対アジア戦略だ。

あるいは近い将来、日章旗を掲げた艦船がこの地域で中国艦船と睨み合うこともあろう。日本が集団的自衛権を行使できるとなれば、米国は当然ながらそれを期待し、求めても来よう。

政府は集団的自衛権行使の容認を前提に自衛隊法など関連法案を先行改正する方針だが、積極的平和主義も度が過ぎれば国益を損なう。拙速は許されない。

【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】

Photo : Shinzo Abe at CSIS(Wikimedia Commons /Author:Ajswab)