大誤報か大スクープか? 読売新聞TPP報道の真相(デイリーノーボーダー編集部)
安倍晋三首相とバラク•オバマ米大統領の日米首脳会談の翌25日の夕刊各紙は、1面トップでTPP交渉が大筋合意に至らなかったことを報じていた。大統領の離日直前に発表された共同声明にも、TPPに関する具体的内容は盛り込まれなかった。ところが、読売新聞だけが〈日米 TPP実質合意〉と黒地に白抜きの大文字でぶち上げたのだ(写真)。
読売を除く各紙は甘利明TPP担当相の言葉として、関税の引き下げ幅などを巡る主張の隔たりが埋まらず「大筋合意はできなかった」と書いている。しかし、読売の記事は真逆だ。
〈日米両政府は25日午前、牛•豚肉やコメなど農産物の「重要5項目」や自動車の安全基準など協議全体で実質的に基本合意した。これを受け、両政府は日米首脳会談の成果を盛り込んだ共同声明を発表し、TPPについて「前進する道筋を特定した」と明記した〉(4月25日 読売新聞夕刊)
読売によると、合意の内容はまず、焦点となっていた牛肉の関税(38.5%)については、20年程度かけて「9%以上」の水準に引き下げるという。日本国内の農家を保護するため、基準価格より安い輸入豚肉ほど関税率が高くなる「差額関税制度」を維持する一方、米側の主張に応じて基準価格が大幅に引き下げられる見込みという。(ほか、いろいろ)
こうした合意内容は、他のTPP交渉参加国との調整が残っているため、共同声明には盛り込まれなかったという。もちろん他の新聞にも書いていない。事実だとしたら、読売の大スクープだ。
この間の日米交渉では、読売が常に他紙を出し抜いていた。首脳会談に先立つ20日付の1面トップですでに〈牛肉関税「9%以上」〉と書いている。そしてなんといっても凄かったのが、首脳会談の前日にオバマ大統領の単独“書面”インタビューをものにして、「尖閣諸島は日米安保の適用対象」との見解をいち早く伝えたことだ。
読売は、米国サイドによほど強いパイプがあるのか。そして交渉の帰趨は、はたして読売の言う方向に向かうか。いずれ明らかになるだろう。
【DAILY NOBORDER編集部】