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漁連への回答書の「対策」とは「単なる意志表示で具体的には何も対策は無い」(おしどりマコ)

4月11日の東京電力記者会見において、驚愕の回答が出たので速報として記す。

3行まとめ

1.地下水バイパスは福島漁連の了承を得られれば、実行することになっていた。
2.漁連が3月25日に出した要望書に対する東京電力の回答書が4月4日に公表され、それを受けて4日に理事会を開き、漁連は計画を了承した。
3・その回答書の中身「(海に排水する地下水が)運用目標未満になるよう対策」とは具体的に何か、と質問すると「単なる意志表示であって、具体的には何も無い」とのことであった。

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福島県漁業共同組合連合会からの地下水バイパス水に関する要望書に対する東京電力の回答
http://www.tepco.co.jp/news/2014/images/140404a.pdf

[caption id="attachment_20287" align="aligncenter" width="620"] http://www.tepco.co.jp/news/2014/images/140404a.pdf[/caption]

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地下水バイパスとは福島第一原発の汚染水対策の1つである。
原子炉建屋に日々地下水が流れ込み、それによって日々汚染水が増えるため、原子炉建屋に流れ込む直前で地下水を汲み上げ、海に流す、という計画である。

[caption id="attachment_20278" align="aligncenter" width="620"] https://www.nsr.go.jp/disclosure/meeting_operator/BWR/data/20130424_04_shiryo02.pdf [/caption]

[caption id="attachment_20277" align="aligncenter" width="620"]

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www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130327_04-j.pdf[/caption]

これは2012年から検討され、年末から地下水の揚水井が掘削され始めた。

そして、2013年に福島県の漁連の了承が得られしだい、実行するということになっていた。

しかし、2013年4月の地下貯水槽の汚染水漏えい、8月から続いている様々なタンクエリアからの汚染水の漏えいなどから、地下水バイパスの計画は危ぶまれてきた。

なぜなら、この計画で重要なことは、汲み上げて海に流す地下水が汚染されていないことだ。
だが、地下水を汲み上げる地下水バイパス揚水井は、地下貯水槽、タンクエリアの下流側にあり、
土壌に大量に漏えいした汚染水がその揚水井に影響するのではないか、と思われた。

実際、2013年から、この地下水バイパス揚水井は、地下貯水槽・タンクエリアから漏えいした汚染水の調査のための観測孔の役目を担うことになる。

(地下貯水槽の漏えいだけでなく、タンクエリアの漏えいは2012年から様々続いている。今回、それらを全て記載したマップを作成しようとしたが、余りに多すぎて、手間取るため、後日記事にする。)

[caption id="attachment_20276" align="aligncenter" width="620"] https://www.nsr.go.jp/disclosure/meeting_operator/BWR/data/20140220_04_shiryo.pdf[/caption]

[caption id="attachment_20294" align="aligncenter" width="620"] https://www.nsr.go.jp/disclosure/meeting_operator/BWR/data/20140220_04_shiryo.pdf[/caption]

ここで、備考として、地下貯水槽の漏えいについて言及しているが、タンクエリアからの漏えいの影響を最も受ける地下水バイパス揚水井No.12のトリチウムの測定値はずっと上昇傾向で、4月10日発表の資料では過去最大値となっていた。

[caption id="attachment_20279" align="aligncenter" width="620"] http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/smp/2014/images/pump_well_14041001-j.pdf[/caption]

ここで、冒頭の漁連への東京電力の回答書の資料を見直してほしい。

トリチウムの運用目標は1,500Bq/Lである。

1月に980Bq/L、2月に1,100Bq/L、3月に1,200Bq/Lと上昇し続けていたトリチウムの測定値が4月に1,300Bq/Lとなった。
この揚水井のトリチウムが、地下水バイパスの運用目標を越えるのは時間の問題と思われる。

そのことも含め、筆者は東京電力定例会見にて、4月4日から漁連への回答について質問を繰り返していた。

[caption id="attachment_20280" align="aligncenter" width="620"] http://www.tepco.co.jp/news/2014/images/140404a.pdf [/caption]

ここで運用方法として、

「運用目標以上となった場合は、稼働を一旦停止し、運用目標未満(全βは1Bq/L未満)になるよう対策した上で、再開いたします。」

とある。

では、いったいこの「運用目標未満となるよう対策」というのは具体的に何か、と質問し続けた。

4月4日から質問し、11日に回答が出た。

東京電力、原子力立地本部長代理、尾野昌之氏はこう回答した。

「汲み上げた水の値を測って、運用基準を超えるものは海に流さないということで、そうした運用基準を必ず守っていくという意志表示である。」

筆者は驚いて聞き返した。

ーー具体的にこの対策というのは何か、と質問したのだが、これは単なる意志表示という意味か。

東京電力・尾野「そうだ」

ーーでは具体的に何か対策がある訳ではないのか

東京電力・尾野「そうだ」

ーーでは運用目標以上の値が水から出た場合はどうするのか。溜め続けるのか、希釈して排水するのか。

東京電力・尾野「状況に応じて考える。」

ーー状況に応じて考えるということは、今の時点で具体的な対策は無いのか

東京電力・尾野「特に考えていない。」

ーー4月10日発表の地下水バイパス揚水井No.12は1,300Bq/Lであり、運用目標である1,500Bq/Lに近づいていて、最近の上昇のペースから、運用目標値を超えるのは数か月後とみられるが、それでも現時点で目標値を超えた場合の対策は何も無いのか。

東京電力・尾野「値がどのように変わっていくかということは今の時点ではわからない。例えば超えるのは100年後か、1000年後か。」

ーー数か月後かもしれないが。

東京電力「いずれにしても、それまでに我々の検討結果がまとまっていれば、それまでに考えたことになるし、
考えるまでの間にそのことが最にやってくれば、結果として考える前に高い値が出てきたということになる。」

(このあたりの東京電力・尾野氏の回答は意味不明である。
この質疑は、福島漁連の方々への東京電力の回答文書についてである。
海に流す地下水の放射性物質の測定値について、漁連の方々への回答として、あまりにも不誠実ではないだろうか。)

ーー地下水バイパスの計画において、運用目標というものは決まってるが、それを超えた場合の具体策を一度も説明されておられないのだが。

東京電力・尾野「今この場で将来のことについて確定的なことを申し上げることはできない。」

ーーもちろん不確定要素だが、この地下水バイパスのプロジェクトにおいて、運用目標というものを定めた以上、もし超えた場合の具体策が無い、今の時点で無いにも拘らず、地下水バイパスの計画を実施するというのはかなり問題があると思うのだが、いかがか。

東京電力・尾野「まぁそれはご意見かと思う。」

ーー確認するが、漁連に対する要望書の回答として、「運用目標未満になるよう対策をした上で」という表現を2回使っておられるが、この「対策」というのは「単なる意志表示で今のところ、具体的には対策は無い」ということでよろしいか。

東京電力・尾野「ですから無い、と申し上げている。」

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この質疑のやりとりの全文は書き起こしているのでこちらも参照してほしい。

おしどりマコ・ケンの脱ってみる?デイリー
http://daily.magazine9.jp/m9/oshidori/2014/04/post-163.html

上記はおしどりケンが書き起こしたものだが、東京電力の会見を書き起こし続け、
原発事故についての情報をウォッチし続けている ドラえもん(@jaikoman)氏による書き起こしもある。

http://genpatsu-watch.blogspot.jp/2014/04/20144111730.html#more

4月11日の筆者の質疑の中で、彼自身の意見としてたびたびコメントしているが、
東京電力の会見において、どのような回答がなされているか、もっと国民が注目すべきである。

東京電力自身のライブ配信や、インターネットメディアであるIWJ、ニコニコ動画などで、会見の模様はライブ中継している。

大手新聞やTV局が福島原発事故の情報の扱いを小さくしている現状だが、
インターネットでは中継で全て見ることができ、アーカイブも残っている。

どのような酷い対応を東京電力がとっているか、我々自身の目で簡単に確かめることができるのである。

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しかし、なぜ、このような対応を東京電力はとるのであろうか。

地下水バイパス揚水井No.12のトリチウムの測定値が、海に排出する運用基準を数か月以内に超えることは簡単に予想できることである。

筆者は、アッと思いついたことがあり、会見終了後に東京電力社員にぶら下がり取材した。

ーーこの運用目標の値というものは、地下水バイパス揚水井から海に放出する際に一旦サンプリングタンクに汲み上げる際に適用する値か。

東京電力「そのとおりである。」

ーーつまり、個々の揚水井には関係の無い値ということか。

東京電力「そうだ。海に放出する前に貯留するサンプリングタンクに関するものだ。」

ーーサンプリングタンクには、地下水バイパス揚水井のNo.1~12の全てのものが移送されるが、それを混ぜ合わせての値ということか。

東京電力「そうだ。」

ーー揚水井には47Bq/Lや64Bq/Lなど比較的低濃度のものもある。全て揚水井のものでしか判断しないとなると、高濃度の汚染水があっても、希釈されるではないか。

東京電力「まぁそういう考え方になる。」

ーーたとえば、No.12が運用目標を超えた場合、No.12だけ排除して、運用目標以下の揚水井の地下水だけ海に排出する、ということはできないのか。

東京電力「構造上、それはできない。全ての揚水井のものがサンプリングタンクに行く構造なので。」

ーー地下水バイパスの計画は、2012年にできたが、2013年に地下貯水槽やタンクエリアの汚染水の漏えいが様々見つかった。それの下流側である地下水バイパス揚水井が、土壌の汚染水の調査孔になったほどだ。
汚染水漏えいが上流側で多々発生したことで、元々の構造、計画を変更して、全ての揚水井のものをサンプリングタンクに移送する、という計画を変える検討は無いのか。

東京電力「その検討は無い。全ての揚水井の地下水をサンプリングタンクに汲み上げ、その値で海に排出するか判断する。」

ーーそうすると、繰り返しになるが、No.12の揚水井が運用目標を超えても、他の11の揚水井の地下水が運用目標を超えていなければ希釈され、サンプリングタンクの測定値は運用目標を下回る。

逆に、サンプリングタンクの測定値が運用目標を超える、という場合は、ほぼ全ての揚水井が運用目標を超えるか、いくつかの揚水井が、希釈が追い付かないくらい高濃度汚染されるか、ぐらいのケースしかないではないか。

東京電力「まぁそういうことになる。」

あと数か月後には地下水バイパス揚水井No.12が運用目標値を超えることが予想されているにも拘らず、
東京電力・尾野氏が 「(汚染値が運用目標を)超えるのは、100年後か、1000年後か」と答えたのはこういう理由だったわけである。

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筆者は改めて地下水バイパスの構造を調べた。

[caption id="attachment_20281" align="aligncenter" width="620"] http://www.nsr.go.jp/disclosure/meeting_operator/BWR/data/20130926_03_shiryo02.pdf[/caption]

(ちなみに過去の資料を確認して驚いたことがある。
原子力規制庁、経済産業省へは2013年9月26日に「地下水バイパスの進捗状況について」という資料を提出しているのだが、定例会見では報道向けに公表していない。
2013年3月4月は「地下水バイパスの進捗状況について」という資料は、規制庁・経産省ともに、会見で報道向けにも配布されていたのだが。
東京電力は2013年秋以降、情報公開が衰退していっていることを改めて感じた。)

本当に汚染された揚水井の地下水を排除することは不可能だろうか?

A系、B系、C系(地下水バイパス揚水井のNo.1~4がA系、No.5~10がB系、No.11~12がC系)と分かれており、それぞれが一時貯留タンクにつながっている。

汚染された揚水井を含む系は排水用タンクに移送しない、ということは可能ではないのか。

 

[caption id="attachment_20282" align="aligncenter" width="620"] https://www.nsr.go.jp/disclosure/meeting_operator/BWR/data/20130424_04_shiryo02.pdf[/caption]

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いずれにせよ、福島県漁業協同組合連合会からの要望

1.地下水バイパス水の排出運用目標を明確にし、それらを厳重に遵守する事
2.実施にあたっては排出運用目標及び定例モニタリングによる運用方法を明確にし、
それら運用方法を厳重に遵守する事

これらへの回答として書いている。

運用目標以上となった場合は、稼動を一旦停止し、運用目標未満(全ベータは1ベクレル/リットル未満)になるよう対策した上で、再開いたします。

この「対策」という言葉は「具体的に何も無く、単なる意志表示」という回答であった。

3つ目の要望である、

3.排出を実施するにあたり、その安全性を第三者の監視の下しっかりと福島県民へ広く伝わるマスコミを通じて広報していく事

広報である東京電力定例会見においてのやりとりで、すでにこのような状態である。

ちなみに、「第三者の監視」とあるが、この地下水バイパスの計画において、
測定の第三者機関の1つとして入っている環境総合テクノスは、関西電力の100%出資会社である。

このことについて筆者が質問を重ねていた際、質問をカットするように指示が入っていた。
それらをまとめたのが下記の記事である。

東電会見に「マコちゃんは適当なとこでカット」のメモ
http://op-ed.jp/archives/8929

地下水バイパスは汚染水低減のために必要な計画かもしれない。
しかし、情報の透明性、説明責任、様々なリスクを含めた複数のケースを想定した計画などが全く欠けている現状では、信頼性が全く無い。

そして、福島県漁連が地下水バイパスを了承する元となった、東京電力の回答書の中身に使われている「対策」という言葉は
「これからきっちりやっていくという意志表示」であって、実質は「具体的な対策については何も無い」ということは余りにも酷い。

(写真:おしどりケン)

【NBオリジナル】

[caption id="attachment_20290" align="aligncenter" width="620"] おしどりケンが「躍動的なぶら下がり写真が撮れたため使ってほしい」と主張したが、単にブレているだけでは、と筆者は思う。[/caption]

【DNBオリジナル】