安倍政権は人の善意に頼らない地域医療と介護の充実をめざせ(藤本 順一)
消費税率が8パーセントになった1日、安倍晋三首相は記者団を前に「年々伸びていく社会保障費の増加を賄い、国の信任を維持するためのものだ。全額社会保障費に充て、子育て支援の充実にも使う」と述べ、消費増税の意義を強調した。
ぜひ、そうあって欲しいが、税と社会保障の一体改革はこれからが本番だ。同日、衆院で審議入りした地域医療・介護確保法案が第一弾となる。
同法案は現行の高齢者医療・介護保険制度の運用を見直し、膨らむ社会保障費に歯止めをかけると同日必要なサービスの質と量の確保を目指すもの。
例えば、介護分野では15年度から年収280万円以上の人の自己負担を1割から2割に引き上げ、多額の預貯金がある介護施設入所者への食費・部屋代補助を廃止する一方、低所得高齢者の介護保険料の軽減拡充を計る。
そして何より大きく変わるのは要介護と同様、これまで全国一律の基準で行っていた要支援の通所・訪問介護サービスを地域の実情にあったサービスが提供できるよう市町村事業に移管。併せて都道府県毎に在宅医療・介護推進のための基金を創設して裁量を委ねるとしたことだ。
要支援者は自活が可能で比較的元気な高齢者が多く、求めるサービスも多種多様である。これを一律に扱えば、お年寄りは不要なサービスを押し付けられることにもなる。その意味からして要支援の切り離しは社会保障費の抑制には効果的だ。
ただ、実際の運用について政府はボランティアやNPO、民間企業との連携、協力を前提としているようだが、人の善意ほど当てにならないものはない。既存の介護サービス事業者が中心になるとしても、人材の質や量の確保で地域毎にバラつきが出てこよう。
あるいは民間企業ではコンビニ最大手のセブンイレブンや京王電鉄が見守りサービスや宅配サービスを、またカラオケ最大手の第一興商が自治体と提携して健康体操施設を運営しているが、多くはまだ実験段階である。
各自治体には今後、こうした企業それぞれが蓄積してきた高齢者の見守り、生活支援、健康管理等のノウハウ、得意分野を有機的に結び付け、制度化することが求められよう。
あるいは企業の社会貢献には税制面で優遇、事業を後押しすることを考えてはどうか。実のある国会審議を期待したい。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】