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強盗国家ロシアに媚びる安倍外交(藤本 順一)

「我が国は力を背景とする現状変更の試みを決して看破できない」

安倍晋三首相は19日の参院予算員会でこう述べ、クリミア半島を併合したロシアを「ウクライナの統一、主権や領土の一体性を侵害するものだ」と批難。24、25両日にオランダ・ハーグで開催される核安全保障サミットの際にG7首脳による非公式会合を行い、さらなる対ロ制裁措置を話し合う。当然ながら日本は欧米と足並みを揃えて断固とした姿勢を示すべきだ。

言うまでもない。ロシア(ソ連)は日ソ不可侵条約を一方的に破棄して千島列島に軍事進攻、戦後、実行支配を既成事実化して日本固有の領土である北方四島の領有権を主張してきた。あるいは韓国は同様に竹島を占拠して領有権を主張、尖閣諸島の収奪を目論む中国は日本に対する軍事的圧力を強めている。

その意味でロシアのクリミア半島併合は、日本の国益にも直結する由々しき事態だ。

ところが安倍首相のこれまでの対応はどうか。米国とEUが17日の時点でロシア要人の資産凍結、渡航禁止など、第二段階となる冷戦後最も包括的な対ロ制裁を科した。ところが日本は18日になってようやく、ロシアにとって何ら実害のない査証発給要件の緩和に関する協議停止や新投資協定など両国間の締結交渉開始を凍結することを決めただけだ。これはEUが6日に発表した第一段階の制裁内容とほぼ同じ。しかも19日にはまるでウクライナの蛮行がなかったかのように「日露投資フォーラム」を東京で予定通り開催、対ロ経済協力に積極的な姿勢を示してしまった。

先に安倍首相は平和的収拾を働きかけるとして谷内正太郎・国家安全保障局長をロシアに派遣したが鼻にも掛けられずにこの有様だ。要するに腰が退けているのである。

秋にはプーチン大統領が訪日する。北方領土交渉の進展が期待されているところだが、これではロシアだけでなく、中韓両国からも足元をみられかねない。

ましてや日本と価値を共有する国々と連携して国際平和に積極的に貢献するのが安倍外交だったはず。その真価が問われる対ロ制裁の今後である。

【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】

Photo:PresidenciaMX2012-2018(Wikimedia Commons)