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立正佼成会が政府に「集団的自衛権の行使反対」で政府申し入れ(大貫 康雄)

安倍政権が、集団的自衛権の行使容認への議論を進めつつあることに対し、大宗教団体のひとつ立正佼成会は“憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認は、国民の意志確認を軽視する非民主的な行為”との見解を発表。思想・信条の自由を掲げる宗教団体として、憲法解釈による集団的自衛権の行使容認に反対する姿勢を鮮明に打ち出した。

立正佼成会は「日本国憲法の解釈変更による集団的自衛権の行使容認に対する見解」で、

●憲法改正には、憲法第96条に定められている通り、最終的に国民に判断を求める国民投票が必要条件とされている。

憲法の基本原則たる「平和主義」のあり方については、政府自身による解釈が長年にわたり維持され、かつ、それが国民や国際社会に広く受け入れられてきた、

と踏まえ

●このような憲法の基本原則について政府の解釈変更によって集団的自衛権の行使を容認しようとすることは、国民の意志尊重を軽視する非民主的政治プロセスであり、

近代国家の大原則である立憲主義を否定するものである、と指摘。

安倍政権に対し、改めて憲法9条の理念を深く理解し、武力で非暴力によって平和の実現に向けた最大限の努力をするよう促している。

また、「見解」では、これまで制限されてきた自衛隊の活動他国での紛争や戦争にまで拡大する恐れがあると懸念を表明し、専守防衛の枠を超えて武力を行使せざるを得ない事態に発展する危険性を指摘している。

立正佼成会はこの見解を3月中旬、菅義偉官房長官、自民党の石破茂幹事長、民主党の海江田万里代表を相次いで訪ね、直接手渡している。

立正佼成会は、会員総数1000万人を優に超える「新宗教連盟」の有力な一員で、いわゆる葬式仏教集団ではない。終戦の日に先だって、毎年、千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れていることでも知られている。

靖国問題では、総理大臣など公人の公式参拝は国家権力の介入に繋がり(憲法に規定する)「政教分離」の原則や「信教の自由」が脅かされる可能性があるとして反対している。

立正佼成会は1985年に『平和大国への道』を発刊、2005年には『憲法改正に対する基本姿勢』、2012年には「『憲法改正』に対する見解~憲法の『平和主義』を人類の宝に」を発表。対立の止まない現代社会にこそ、現憲法の平和理念が必要との立場を取っている。

さらに脱原発の立場を打ち出し、核兵器削減では各国世論に呼び掛けるなど、幾多の問題に関して日本国内だけでなく国際的にも多くの宗教団体との積極的な協力を進めていることでも知られる。世界の諸宗教の関係者で作る世界宗教者平和会議の有力会員でもある。

集団的自衛権の行使容認を巡る議論に関する今回の見解表明は他の宗教団体にも少なからぬ影響を与えると推測される。

【DNBオリジナル】

photo:Lombroso/PD