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またもや停止したALPS 復旧のめどなし(木野 龍逸)

[caption id="attachment_19862" align="alignleft" width="300"] ALPSのサンプルタンクの操作画面。ひとつずつ切り替えて使っていく。(東電資料より)[/caption]

 

 

 

 

 

 

 

今日未明にツイッターに連投した分を少し読みやすくまとめました。
予想通りというか、ALPSは長期停止が避けられない状況になってます。いったい福島第一の中は誰が何をしてるんだろう・・・です。

まず昨日(3月18日)の時事通信。ALPSの浄化能力が通常の100万分の1から、10分の1に低下。つまりほとんど放射能を除去できなくなったので停止させてるという一報。この時点で東電からは第一報のメールが有り、その後、深夜に臨時メールの続報がきました。

浄化装置で異常、処理中断=全3系統止める−福島第1 時事ドットコム
http://www.jiji.com/jc/eqa?k=2014031800592&g=eqa

東電臨時メールの続報(3月19日 午前0時過ぎ)
福島第一原子力発電所 多核種除去設備(ALPS)B系の不具合ならびに全系統停止について(続報)|東京電力
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2014/1234849_5851.html

ここからメールから転載(確認されている全ベータの放射能濃度)
・A系出口:2.7×10^2Bq/L(採取日:3月17日)
・C系出口:2.2×10^2Bq/L(採取日:3月17日)
・B系出口:1.1×10^2Bq/L(採取日:3月14日)
・B系出口:1.4×10^7Bq/L(採取日:3月17日午前10時45分)
・B系出口:1.1×10^7Bq/L(採取日:3月17日午後2時15分)
・サンプルタンクA:5.1×10^6Bq/L(採取日:3月18日)
・サンプルタンクB:3.6×10^6Bq/L(採取日:3月18日)
・サンプルタンクC:9.2×10^6Bq/L(採取日:3月18日)
・J1エリア(D1)タンク:5.6×10^6Bq/L(採取日:3月18日)
ここまで転載−−−
(注)除去性能は、A系およびB系の出口と、C系の出口を比較するとわかります。AとBはそれぞれ1リットルあたり300ベクレル以下になっていますが、B系は1000万ベクレル以上の全ベータが残っています。さらにサンプルタンクからは、数百万ベクレルの全ベータが検出されています。

以下、このメールを見ての推察です(少しまとめてます)。

現行ALPSは、Sr90の放射能濃度を1000万分の1〜1億分の1程度に低減することができると評価されています。けれども今回のトラブルでは、Sr90を含む全ベータの放射能濃度が10分の1程度にしか落ちていません(処理前1億Bqオーダー、処理後1000万Bqオーダー)。再開時期は未定です。

ところで気になるのが、第2報で出ているサンプルタンクの放射能濃度。サンプルタンクは、ALPS処理後の放射能濃度が告示濃度限度を下回っていることを確認するために一時的に処理水を貯めるタンクです。もともとの施設運営計画では4基設置されています。ところが東電の臨時メールでは、3基が高濃度に汚染されていることがわかります。

問題なのは、このタンクが汚染されると、ALPS処理後に告示濃度限度以下になっているかどうかを確認できなくなることです。ALPSを使うのであれば、早急に代わりのタンクを設置するか、あるいは徹底的に除染するしかありません。しかし代替タンクと言っても、ただでさえ建設計画が逼迫しているうえに、ALPS用にするのなら設備の近くに置く必要もあります。そのようなスペースがあるのかどうか。といって除染するにしても、数百万倍の放射能汚染を除去するのは容易ではありません。

もうひとつの疑問は、いったい何時から全ベータの除去性能が落ちていたのかということです。サンプルタンク4基は、制御室で切り替えて使うようになっています。だから確認をしっかりしていれば1基の汚染で済んだのではないかと思いますが、今回は3基が汚染されるまで気がついていなかったことになります。

サンプルタンクは、切り替えながら汚染を確認していくようにしてたはずです。昨13年4月、東電は制御パネルの誤操作でALPSを止めたことがありました。その検証結果の中にサンプルタンクの操作画面が出ています。資料の5ページ目です。(http://www.tepco.co.jp/news/2013/images/130424e.pdf

もし一個ずつ確認しながら順番に4基のタンクを使っていたのなら、除染性能が低下した時点ですぐにわかったはずです。いったいサンプルタンクの運用はどうなっていたのでしょうか。放射能濃度はきちんと確認していたのでしょうか。どのような手順でALPSを動かしていたのでしょうか。

今回のALPSトラブルの疑問点を整理すると、1)除去性能の確認頻度、2)サンプルタンクの運用方法、3)いつから性能が落ちていたのか、4)他の2系統でも同じ問題が起きる可能性があるか、ということになりそうです。

どうも運用ミスがあるような印象を受けます。繰り返しですが、なぜサンプルタンクが3基も汚染されてしまったのかが重要なポイントになります。

いったい初代ALPSはどうなるのでしょうか。現場の作業員からは、初代ALPSよりも新設するALPSのほうが稼働が早いのではないかという冗談も出ていますが、冗談ではすまなくなってきました。といっても新設ALPSはまだ先の話。その間に東電の汚染水計画はどうなるかというと、今でも計画は破綻してるので、破綻の破綻ということになるような。。。

というところまでが、今朝未明のツイッターへの投稿でした。その後、今日19日の午後に毎日新聞が電子版で、以下のことを伝えています。

福島第1原発:処理水タンクで濃度920万ベクレル(毎日新聞)
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20140319k0000e040224000c.html

記事では、サンプルタンクなど大量のタンクが汚染されたため除染が必要で、復旧の目処が立っていないと報じています。

原因はなにか。またもや人為的ミスなのではないのか。もしそうなら、なぜ同じようなミスが続いて起きるような人員配置になっているのか。あるいは手順の問題なのか。もしそうなら汚染が拡大するような手順になっていたのはなぜか等々、東電メールでは何もわかりません。そしてトラブルが頻発することに対して、監督役の資源エネルギー庁や規制庁も有効な手を打てていません。

ところで冒頭に紹介した東電のメールは、事態の重要性は伝えずに放射能濃度だけを列記しています。もし意図的に重要度の説明を省いているとしたら、相変わらずの隠蔽体質というしかありません。反対に意図的ではないとしたら、説明能力の欠如なので、信頼回復は期待できません。

東電の迷走はまだまだ続きます。

【ブログ「キノリュウが行く」より】

Photo : TEPCO Head Office (Wikimedia Commons/Author: PON)