安倍首相は大人が小人に接するがごとくの対韓関係修復を(藤本 順一)
「人間が自然を支配できるという驕りが核兵器による悲劇を生み、福島の原発事故を生んだ。電力を湯水のごとく消費してきた責任をすべての福島の被災地の方々に負わせてしまったのではないかという気持ちを持ち続けなければならない。将来の脱原発を見据えて議論を尽くしたい」
伊吹文明衆院議長は11日に行われた「東日本大震災3周年追悼式」のあいさつでこう述べ、原発再稼働に前のめりの安倍政権をやんわり牽制した。
きっと多くの国民が伊吹議長と同じ思いで3・11を迎えたのではなかろうか。
ちなみに伊吹議長と共に壇上に並んだ安倍信三首相は原発政策には触れずに「災害に強い強靭な国づくりを進めていくことを固く誓う」と昨年の追悼式と同じ言葉を繰り返すに止めている。
またこの日、原発立地県の島根県議会では「原発からの計画的脱却、省エネルギー化と再生可能エネルギーの普及」などを盛り込んだ「エネルギー基本条例」案を自民系会派などの反対多数で否決している。条例案の是非はともかく、フクシマの悲劇、原発事故の恐怖が年を重ねて風化することがないよう願うばかりだ。
追悼式には天皇、皇后両陛下、犠牲者の遺族代表ら約1200人が参列。海外138か国の政府とEU代表、台湾とパレスチナの駐日代表も出席して行われた。中国は日本政府が台湾を招待したことに反発して二年連続で欠席したが、対日関係の悪化から昨年欠席した韓国は出席した。
背景に日韓両国の関係改善を求める米国の存在があることは察しが付こう。先に安倍政権が河野談話の検証、見直しに積極姿勢を示したことが韓国だけでなく米国の逆鱗に触れたことは周知のとおりだ。
これに慌てた菅義偉官房長官が10日の記者会見で見直しを否定、河野談話の継承を明言して軌道修正に追い込まれている。
さらに米国は今月24日からオランダ・ハーグで開催される核安全保障サミットで日米韓三カ国の首脳会談が実現できるよう環境整備を日本に迫っている。4月下旬に予定しているオバマ大統領の日韓両国訪問を成功させるためだ。
言うまでもなく、極東アジア最大の脅威は中国である。日韓関係の足並みの乱れは安全保障上、何らプラスはない。偏狭なナショナリズムに縛られた安倍外交は国益を大きく損なう。
有事の際には韓国が米軍の前線基地となり、日本の防波堤にもなるのだから、ここは大人が小人に接するごとく、韓国の顔を立てて関係修復に努めてはどうか。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】
Photo:PresidenciaMX2012-2018(Wikimedia Commons)