震災復興から国民の目をそらす安倍政権の解釈改憲(藤本 順一)
東日本大震災から丸3年。いまだに27万人が避難生活を余儀なくされ、とりわけ福島原発事故周辺地域は高濃度の放射能汚染が放置されたまま、被災地住民は絶望の淵に立たされたままだ。
安倍晋三首相は10日の参院予算員会で「復興はまだ道半ば。今年は被災地の皆様に復興をより実感していただけるようにしたい」と述べた。今年こその裏返しは去年の不出来を認めたもの。このため政府は同日の首相官邸で復興推進会議と原子力災害対策本部合同会合を開き今後の重要施策を打ち出した。
たとえば、これまで被災地事業者に限定していた仮設商店を本施設に建て替える際の補助金の対象を、被災地外の事業者が共同参画するケースにまで拡大し、政府が街づくりの計画段階か積極的にサポートする。
また、健康生活面でも高齢者への訪問活動、子供が遊べる屋内施設の拡充、東京五輪の聖火リレーや関連イベントの東北開催などが盛り込まれている。
けっこうなことではあるが、何やら復興や原発事故の本質から国民の目をそらすための謳い文句に聞こえなくもない。
朝日新聞の独自調査では政府が震災後の5年間に25兆円を見込む復興事業予算のうち実に約3兆円が消化不良で繰り越しているそうだ。事業を執行する自治体の人手不足が原因だとか。
労働力不足が復興の足かせになっているのもかねてより指摘されているところだが、政府に打つ手はない。
あるいは放射能の除染はどうか。先週8日、福島県の被災地を視察した安倍首相は政府が原発事故周辺自治体に建設を計画している汚染廃棄物の中間貯蔵施設について「さまざまな意見があるのは十分承知しているが、除染を進めるうえで極めて重要だ」と述べ、建設を急ぐ考えを示した。地元住民の反発はあるが、ここは政治決断が求められるところだ。
「経済政策がうまく転がらなかったときに、日本の安全と安心にかかわるところにすり替えていくとしたらきわめて心配だ」
元自民党幹事長の古賀誠氏が7日のテレビ番組で集団的自衛権の行使容認に意欲をみせる安倍首相の政権運営をこう評していた。被災地復興とて同じだ。
安倍首相の自民党総裁としての任期は来年9月まで。あれもこれもと欲張らずに、経済の立て直しと被災地復興に専念すれば再選、長期政権の道はあろう。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】
Photo:PresidenciaMX2012-2018(Wikimedia Commons)