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東日本大震災から3年、NHKの世論調査も原発に否定的(大貫 康雄)

東日本大震災から3年、NHK放送文化研究所の原発事故に関する二つの調査結果がそろって報じられ、世論調査の正確度や質問項目による違いを考えさせられた。

調査方法と対象により結果が異なること”や“マスコミの政府より報道が続けられたにもかかわらず原発やその安全性に否定的な回答が大勢をしめたこと”は特に印象深い。

ひとつは、2年前に続く「原発に関する意識調査」で、その結果、圧倒的多数の人が、原発に否定的であることを3月10日に報じた。

NHKによると、調査は11月から12月にかけて16歳以上の全国3600人を対象に質問文書を配布して答えてもらう方法で調査したもので、68%(2459人)から回答を得たという。

その結果……。

①  原発近くの人たちに影響を及ぼす事故が起きる不安については、「大いに感じる」が37%、「ある程度感じている」が50%(安全性への懸念が合わせて87%にのぼる)、「あまり感じていない」が12%、「まったく感じていない」が2%、で原発事故への不安が、解消されていない実態が浮かび上がったとのことだ。

②  停止中の原発の運転再開については、「賛成」が11%、「反対」が44%(運転再開反対が賛成の3倍に上る)、「どちらとも言えない」が44%。

③  原発を今後どうすべきかについては、「増やすべき」が1%、「現状を維持すべき」が22%に対し、「減らすべき」が44%、「すべて廃止すべき」が30%(合わせて74%で、脱・減原発が圧倒的)となった。このうち「すべて廃止すべき」は、2年前の調査より10ポイント増えているとのこと。

④  福島第一原発の現状については、「不安だ」、「どちらかといえば不安だ」(不安を抱いている人たち)が合わせて95%、「どちらかと言えば不安でない」、「不安でない」が合わせて5%との結果が出たという。

この調査は、質問を郵送して答えてもらうもので、質問を受け取った人は落ち着いて考える余裕がある。また日中、職場や外で活動している人たちで、様々な情報に接し、友人たちと話し合う機会が多い人たちであることなどから、より広範な関連情報を得ることができる人たちであったことが推測できる。

一方、NHK放送文化研究所も“定期的な「内閣支持率」”の最新の調査を実施、結果を報じている。

この調査では、被災地の復興について「復興が進んでいない」が「進んでいる」と答えた人の3倍近くにのぼり、「復興への安倍内閣の取り組みを評価しない」と答えた人が「評価する」と答えた人より遥かに多かった。

それ以上に印象的なのは、原子力規制委員会が安全性を確認した原発の運転再開を進める政府の方針について、先の調査ほどの差は出ないが、「賛成」が21%、「反対」が37%、「どちらともいえない」が38%で、政府の方針に賛成するより反対の声がかなり上回ったことだ。

この世論調査は3月7日から3日間、全国20歳以上の男女をコンピュータで“無作為に発生させた”番号に電話をかける「RDD」という方法で行ったもの。また調査対象は1629人で、1028人から回答を得たという。

電話は日中にかけられ、対象となった人はもっぱらテレビや新聞、いわゆるマスコミだけから情報を得ている傾向がある。情報を主にインターネットで得ている世代が調査対象になりにくいこと、電話応対であまり考える余裕がない、などの問題点が指摘されている。

政府やいわゆる「原発ムラ」が、陰に陽にマスコミを使って“データの隠蔽”や“誤魔化し”“原発事故の矮小化”を続けてきたことが各方面から指摘されている。

2月の都知事選では、原発問題を選挙の焦点から外すべく、NHKをはじめ、マスコミによる“原発隠し”が出演当事者や候補者陣営の関係者たちの証言から明らかになっている。公正中立な報道どころか、あきらかに脱原発を掲げる候補者に不利な報道を続けたわけだ(筆者個人は、この報道は厳密にいえば公職選挙法違反であると見ている)。

こうしたマスコミ情報だけに頼る人たちは当然、その影響を強く受ける。また、これまで原発推進を主張し、反原発の人たちを非難した舛添候補は「どちらかといえば脱原発」などと、曖昧な表現でいままでの言動とは逆方向のことをいい、マスコミはこの点をきちんと追求しなかった

質問を郵送してじっくり考えて答えてもらう調査の結果は当然推測できたが、原発問題では電話による定期調査でも原発の再稼働賛成に比べ、相当多くの人々が原発の安全性に疑念を抱いている結果が出た(NHKは事故を起こした福島第一原発で今もトラブルが続いているのは、原発に否定的な声が大きいことが背景にあるとの解説をしている)。

方法や対象が異なる2つの調査で、比較差の大小はあるが国民の圧倒的多数が原発に否定的な意見を持っていることがわかった。

NHKは新会長や安倍総理に近い経営委員たちの暴言が国際的な批判を浴び、現在、視聴者の監視が強化されている状態だ。この2つの世論調査を内部で安易に操作することはなく(定期調査の方法や質問のあり方の是非はさておき)、信頼度は高いと見ている。

安倍政権は民主主義と言うのであれば、素直に国民の声を受け止め、脱原発への政策転換を行うべきだろう。

【DNBオリジナル】

photo:Steve Herman