3000人の子供たちの笑顔 被災地で続く「紙芝居劇」(成瀬久美)
2011年3月11日に発生した東日本大震災から、まもなく3年が経つ。過去の震災や自然災害と同様、「忘れゆく生き物」である人々の間では記憶や意識の「風化」が進んでいるようだ。
私は、震災後、NPO団体による支援活動などに関わっていたため、早い段階から東北に足を踏み入れることになった。その経験の中で、最終的に活動の主軸を置くことにしたのが「このはな草子」という非営利の紙芝居任意団体の設立と運営である。
子育ての神様である木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)の「このはな」、紙を使って綴じた本、物語という意味の「草子」を合わせて命名したこの団体は、従来の“読み聞かせ”だけではなく、“子どもたちが主役であること”に重きを置いている。観客側が主役になり、実際に動くことで読み進めることが出来る【総合参加型】紙芝居だ。
代表作は、ピアノと世界中のサウンドセラピー楽器を使用した「おとのめ」。福島県南相馬市の保育所の先生から「子どもたちが室内で思いっきり遊べる何かが欲しい、運動をさせてあげたい」という相談を受けたため、そこから思いつき製作した紙芝居である。
現代美術作家の土屋多加史氏とサウンドセラピストの三砂夕紀子氏によって、原画と原音 —生の体験— を子どもたちに、と完成させた。昨年は、明治学院大学ボランティアセンターとのコラボレーション企画によって、新作「きらきら☆ぐるぐる」も製作している。
地道に活動を続けていた結果だろうか、現地の方々が自主的にこの活動を広めてくれ、今では宮城や福島にマネージメント担当者がいるほどだ。活動数も50回を迎え、約3,000人以上の子どもたちとの出会いを重ねて来た。活動をしている私たちの方が、被災地に子供たちから沢山のエネルギーと笑顔をもらっているのではないかと思うほど、現場はいつも賑やかで活気に満ちあふれている。
次回は、奇しくも震災3年目の3.11に福島で上演することになった。訪問先はいわき市。活動報告は追ってレポートする。