米議会調査局が「日韓関係冷え込みはアメリカの国益を損ねる!」と警告(大貫 康雄)
CRS(アメリカ議会図書館調査局・Congressional Research Service)は、日米関係に関する昨年の報告で“安倍政権の国家主義的体質に懸念”を示した(一年前この欄で紹介したので参考にしてもらいたい)。
今年の報告書では、昨年以上に踏み込み(国家主義的な安倍政権の言動による)“日韓関係の冷え込みはアメリカの国益を損ね”さらに“日米間の信頼関係を傷つけた可能性がある”と手厳しい指摘を示している。
この報告書は、NHKが2月25日の昼と夜のニュースで要点を正確に伝えるなど、さすがに日本のマスコミも軽視せず報じた(昨年は読売新聞や産経新聞に至っては“外務省で言えば課長クラスが書いたもの”などと過小評価していたが)。
報告書は24ページに渡り、まず「日本は掛け替えのない同盟国」「日米両国の防衛分野の協力関係を強化するとともにTPP(環太平洋パートナーシップ)協定交渉でも重要な相手」と位置付けている。
一方で、報告書は安倍総理の靖国参拝に関し「東京(日本)とソウル(韓国)関係の(一層)冷え込みをアメリカ政府は一段と懸念している」と続け、同盟国同士(日韓)の緊張状態が続けば「北朝鮮や台頭する中国などの問題に連携した対応を妨げている」と断定。「アメリカの国益を損ねる」と警告している。
その上で、アメリカ側の助言を無視した安倍総理の“突然の靖国参拝は日米両国の信頼の一部を傷つけた可能性”があると懸念を示している。
さらに、安倍総理の歴史観に触れ、安倍氏は第二次大戦とその後の日本占領について「アメリカ人の考えと衝突する危険がある」とまで厳しく指摘している。
この報告書は、その分野の学者・専門家が署名入りで公表し、極めて信頼性の高いものと評価されている。この報告書を参考にアメリカの議員たちが外交問題を討議するため影響力は大きい。決していい加減なものではない。
NHKニュースは、米議会図書館調査局の報告書は「外交関係などについて最新の情報や分析をまとめたもので、アメリカ議会の議員に政策判断の参考資料として提供されている」と重要性を示している。
アメリカは、ジョン・ケリー国務長官が同盟国協力の必要性を最優先に考え、パク大統領ら韓国政府にも日本との何らかの妥協を促している。しかし、東アジアの緊張を高めているのは日本政府が原因だ。(この欄ですでに伝えているが)『ブルームバーグ』は、基本的に安倍政権の国家主義的な愚行であると伝えている。
今年の報告書に使われた言葉を取っても、“国益を損なう”(一部と敢えて調子を弱めながらも)“日米両国の信頼を傷つけた”“(重要な問題に対する)同盟国の連携した対応を妨げ”、第二次大戦とその後の占領の歴史についての安倍氏の考えは“アメリカ人の考え方(戦後歴史観)と衝突する危険”と厳しい表現が並んでいる。
それだけアメリカ側が、懸念のみならず、安倍政権を危険視し始めているのを、この報告書は示している。
歴史観の違いと、安倍政権の国家主義が鮮明になった現在の日米関係は、戦後最悪だと見ている。国家主義(Nationalism)は欧米で最も危険視されているイデオロギーで、安倍氏の危険性は安倍総裁下の自民党が総選挙で大勝した時すでに、海外メディアが指摘している。
以来、米欧政府が懸念した通り、安倍氏の国家主義的言動は強くさえなっている。各国も安倍氏がアメリカの懸念を理解しなかったばかりか、助言さえ無視したことに驚きを隠さない。
(安倍政権の愚行の陰で、中国の拡張主義的行為への懸念は相対的に弱まっている感じだ。中国にとっては“安倍総理様様”かもしれない)
安倍政権が現在の国家主義的路線を反省し、全面的に改めない限り、日本の国際社会での孤立化は、残念ながら避けられないだろう。
【DNBオリジナル】
[caption id="attachment_19433" align="alignnone" width="404"] ケリー米国務長官[/caption]
photo:United States Department of State