朝日新聞が起死回生で放った「NHKスキャンダル」(藤本 順一)
自民党は先週18日の総務会に従軍慰安婦などで問題発言したNHKの籾井勝人会長を呼び、大島理森前副総裁が「内外に不信感が出てきている。信頼を取り戻すのが会長の務めだ」と自省を促した。籾井発言後にケネディ駐日米大使が急遽インタビューを断ってきたことや受信料の不払いなどが拡大していることを懸念してのことだ。
籾井氏は「心から反省し、立場をわけまえて今後は慎重に発言する。不信を払拭するため全身全霊で取り組む」と陳謝し、その場でNHKの来年度予算案は了承された。
しかしながら、これで一件落着にしたくないのが朝日新聞である。同日の朝日新聞デジタル版は、今月12日に行われたNHKの経営委員会で籾井氏が「取り消しているし、どこが悪いのか。率直に読めば理解できるはずだ」との発言をしたと報じて、この問題を蒸し返している。
記憶をたどれば同紙は04年、NHKが従軍慰安婦などをめぐる日本軍の戦時犯罪を扱った番組を01年に放送した際、官房副長官だった安倍晋三首相や故・中川昭一経産相からの圧力があったとして、両氏と番組改編を受け入れたNHKの報道姿勢を厳しく批判している。
しかしながらこの番組は当初、昭和天皇の戦争犯罪を糾弾する内容であり、いわばポツダム宣言に基づく戦後処理を否定するものだった。
そんな偏向した番組を放送する方が間違いであって、政治の圧力がなくとも公正中立を旨とするNHKが自主的に改めるのに何ら落ち度はなかろう。
むろん、NHKは政治介入を全面否定、朝日新聞は誤報を認めないまま記事を担当した極左系の記者はいつの間にか左遷され、今日に至っている。
江戸の敵は長崎で、というわけではないとは思うがこの時、赤っ恥をかかされた朝日新聞にとって籾井発言は、降って沸いた汚名払拭のチャンスではあろう。
経営委員会では籾井氏への批判もあったそうだが、辞任を迫る声はなかったようだ。それでも納得できないのであれば、経営委員が抗議の辞表を叩きつける手はあろうが、今のところその動きもない。
珊瑚礁のヤラセ写真を持ち出すまでもなく、自らの主張を正当化したいがための記事ねつ造は過去、朝日新聞が得意としてきたところだが、今回は墓穴を掘らないようくれぐれも慎重に。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】
Photo : Asahi Shimbun Company Tokyo(Wikimedia Commons /Author:っ)