地下水中のストロンチウム90が500万Bq/L、半年後に初めて発表!?(おしどりマコ)
3行まとめ
*昨年7月の地下水観測孔No.1-2からストロンチウム90が500万Bq/L検出されていた。
*このことは昨年7月下旬にはわかっていたが、β線よりはるかに高い値だったため、東京電力は測定に誤りがあるかも、とこれまで公表してこなかった。
*しかしこれは正しい値で、逆に平成23年3月から平成25年10月までの高線量のβ線の測定値に信頼性が無いことがわかった。
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2014年2月5日の会見で下記の資料が出た。
福島第一原子力発電所におけるストロンチウムー90分析の評価について(2014年2月5日)(概要版)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2014/images/handouts_140205_05-j.pdf
福島第一原子力発電所におけるストロンチウムー90分析の評価について(2014年2月5日)(報告書)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2014/images/handouts_140205_06-j.pdf
これは、H25年6月採取分の港湾内海水試料のストロンチウム-90分析結果が7月下旬に判明し、
ストロンチウム-90濃度が全ベータ放射能濃度を上回る状況(データの逆転)が散見されたため原因究明がなされていたものの報告書である。
つまり、ストロンチウム90はβ線を発生するが、他にもβ線を発生する核種は存在するため、本来なら
全β≧ストロンチウム90
とならねばならないのだが、
測定値は
全β<ストロンチウム90
となっていたのである。
原因は、5,6号機ホットラボで実施しているストロンチウム分析で、放射能計算時に用いるイットリウム90の検出効率が現状の効率より低い値であったため、放射能濃度を3割程度過大評価している、とのことであった。
しかし、翌日発表された、サンプリング値のデータをみると、またもや
全β<ストロンチウム90
になっている。
福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果
(護岸地下水サンプリング箇所)(2014年2月6日発表)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/smp/2014/images/2tb-east_14020601-j.pdf
地下水観測孔No.1-2
2013年7月5日採取分
全βが90万Bq/Lに対して
ストロンチウム90が500万Bq/L
2013年8月8日採取分
全βが88万Bq/Lに対して
ストロンチウム90が400万Bq/L
となっている。
ベータ分析における「数え落とし」の影響について(2014年2月7日発表)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2014/images/handouts_140207_05-j.pdf
簡単に言うと、高線量の分析は「数え落とし」が発生するため、高い値を示したストロンチウム90は正しい測定値であり、
2013年10月以前の測定値で高線量の試料のものは信頼性が無い、ということであった。
「数え落とし」を東京電力によるイメージの説明ではこう話していた。
センサーにβ線という球が飛んでくるとする。
センサーにβ線があたるたびに、1カウント、2カウントとβ線をカウントするのがセンサーの仕組み。
左の絵のように、間隔をあけてあたってくると、1,2,3と順にカウントできるが、
右の絵のように、同時にいくつかのものが一度にあたると、1つとカウントすることがある。
神社のドラにボールをぶつけることを考えれば、1つをぶつければ音がゴンと鳴る。
順番に3回投げれば3回、ゴンゴンゴンと鳴る。
3人が同時に投げ、同時に当たれば、音はゴン、と1回である。
つまり、飛んでくるβ線の密度が非常に高いときは、タイミングにより数え落とすことがあるということ。
高濃度の試料を測定するときは、希釈して測定し、その値を割り戻す。
正確にその作業を始めたのは、2013年10月2日以降ということである。
2011年3月の事故発生以降、2013年の10月1日までの、高濃度の試料の測定値には信頼性がなく、おそらく過小評価されているのだ。
現在、その信頼性が無い期間の測定値の見直しがはじまったとのことである。
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思い出してほしい。2013年6月は、まだ地下貯水槽の漏洩に注目されていた。
敷地内の地下水の動向を調べるため、
2012年12月に掘削して一度測定したきりであった、護岸エリアの地下水観測孔を5か月ぶりに測定した。
すると、地下水観測孔No.1で高濃度のトリチウムとストロンチウム90が検出された。
その後、注目は護岸エリアの地下水に移り、No.1の周囲に観測孔を掘削した。
そのうちの1つ、南側の観測孔がNo.1-2である。
地下水観測孔No.1-1の測定が始まったのが2013年6月28日、No.1-2の測定が始まったのが同7月5日である。
その7月5日のストロンチウム90が500万Bq/L検出されたことが、今回初めて発表されたのである。
ちなみに、ストロンチウム90の告示濃度限度は、30Bq/Lである。
海とつながっていた地下水観測孔での測定値で500万Bq/L(告示濃度限度の約20万倍)であったということが、7か月後に発表された。
なぜ、この値が7か月も公表されなかったか。
東京電力によると「測定値が高すぎるため、誤りがある可能性があったので、公表を控えた」という。
しかし、原子力規制委員会はたびたび「精査はこちらでするので、誤りがある可能性のデータも全て提出せよ」と検討会などで東京電力に指示していた。
しかし、出てこなかった。
東京電力の廃炉計画にお墨付きを与えていた、規制庁、IAEAなどの責任は無いだろうか。
記者会見では、筆者はたびたび、「正当な第三者機関に測定をさせるべきでは」という質問していた。
(ちなみに、東京電力が地下水バイパスの試料を測定させる第三者機関として使用していたのは「環境総合テクノス」という関西電力の100%出資会社である。)
もう一度、過去の試料も含め、測定機関、測定方法を評価してほしい。
タンクエリアの漏洩した汚染水など、全βが高濃度含まれている試料は全て「数え落とし」の可能性があるため、現在、確認対称となっている。
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ここで気になることが2点ある。
1点目は、2013年9月7日のブエノスアイレスにおけるIOC総会について。
安倍総理が「汚染水は完全にブロックされている」と発言し、東京にオリンピックが決まったあの総会である。
2013年7月5日採取の地下水に高濃度のストロンチウム90が検出されたことは、7月下旬には判明していた。
高すぎるため、誤りの可能性があるので精査してから、という東京電力の考えのため、公には発表されなかったが、
この値は内閣府にどこまで認識されていたのか。
知らなかった、としてもお粗末な話である。
2点目は、現場の作業員の被曝状況である。
この付近、いわゆるNo.1護岸エリアの作業は、非常にβ線被曝をする、と作業員の方々から伺っていた。
ウェルポイントの作業や、水ガラスの注入、地下水観測孔の掘削などであるが、
地下水が地盤から数十センチのところまできているため、雨がふると、かなり地面がゆるむという。
つまり、線量の高い地下水に触れやすくなる。
ここの付近を担当している会社は「当初聞いていた計画線量より、はるかに高く線量をくってしまう」とグチをこぼしていたそうである。
なので、このエリアの作業員の方々が、きちんとβ線被曝線量を測定しているか、筆者は昨年8月から質問していた。
足の指に、リングバッジと呼ばれる線量計をつけ、地下水からのβ線被曝を測定しているのか、などたびたび聞いていたが、
回答は「足指のリングバッジは装着していない。」であった。
当初の想定より、はるかに高いストロンチウム90の存在、β線被曝を、どう評価していくのか。
作業員の被曝について「数え落とし」ということは通用させないでほしい、と強く抗議する。
(NBオリジナル)
[caption
id="attachment_19007" align="aligncenter" width="620"] 質問をする筆者(撮影、おしどりケン)(おしどりケンが筆者以外を撮影することを要望したい)[/caption]
(NBオリジナル)