東電本社前での「脱原発」演説を決めた小泉元首相の覚悟(藤本 順一)
先週末、マスコミ各社が実施した東京都知選の世論調査が出揃った。ざっと数字を列挙すると、共同通信は舛添37、細川16、宇都宮14で東京新聞が舛添26、細川13、宇都宮7で日経新聞が舛添39、細川17、宇都宮10。舛添氏が細川氏にダブルスコアの大差を付けてリード。この数字は舛添氏が出馬の意向を表明した今月6日以降、細川氏が小泉純一郎首相と共に出馬表明した14日以前に自民党が実施した世論調査の結果と重なる。
脱原発派の細川、宇都宮両氏を足しても舛添氏に届かないのは、両氏の一本化が不調に終わったことがやはり大きい。当初から危惧した通りの結果だ。
もう一つは脱原発の争点化に失敗、とりわけ細川氏に限って言えば、小泉効果が期待ほどには細川支持の底上げにつながっていないことの表れである。
これに腰を抜かした細川選対の旧側近グループは、先に解任された報道担当の上杉隆氏に倣い、今度は選対責任者の木内孝胤氏以下、これまで選挙実務を担ってきた5人のスタッフ全てを即刻解任。側近グループから金成洋治氏(円より子事務所スタッフ)が選挙責任者に、広報担当には細川事務所の白州智誉氏が就任する。朝日新聞の報道によれば、今後は脱原発一本槍の選挙戦を見直し、景気や雇用、子育て支援や高齢者対策など幅広く有権者に訴えることで支持を広げる作戦だとか。
しかしながら、脱原発一本を錦の御旗に戦うことは、14日の細川、小泉会談で交わした盟約である。これを一方的に破棄するのであれば、小泉氏が支援の大義を失うばかりでなく、そもそも細川氏が出馬することもなかったはず。つまり脱原発派は宇都宮健児氏一本で戦うことができたのである。
しかも、選対の乗っ取りに成功した側近グループは「いかなる政党、団体の支援を受けない」としたもう一つの盟約も踏みにじってしまった。こともあろうに舛添要一氏を支援する連合の中核労組、UAゼンセンから街宣車を借り受けてしまったのだ。
選挙責任者の金成氏は「これからは地上戦だ」と雄叫びをあげているという。狂気の沙汰の細川選対である。
そうなると盟約を一方的に破棄されてしまった小泉氏はこのまま細川支援を続けていくわけにはいくまい。今週末の2月2日、東電本社前に一人辻立ち、最後まで脱原発を訴える予定だ。
一方の細川氏は出馬の際「勝ち負けの問題じゃない」と述べ、自らを桶狭間の信長に喩えた。ところが今や旧側近グループは今川2万5千の大軍を前に恐れおののき、かざした大義の幟を投げ捨てようとしているのである。
細川、小泉の元首相連合は事実上崩壊した。だが、たとえ舛添氏が当選したとしても原発再稼働を認めたことにはならない。
2月2日、東電本社前の小泉氏の辻立ちに脱原発を求める全国民の声を結集することが、新たな戦いの始まりとなろう。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】