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細川・小泉元総理ペアが未来を産み出すスペースをこじあける!?(蟹瀬 誠一)

小泉元総理が推す細川元総理の参戦で東京都知事選が俄然面白くなってきた。それだけではない。慌てた自民党の連中が何と言おうと東電福島原発事故の落とし前をきちんとつけるチャンスが到来したと思う。

東日本大震災から間もない2011年4月、米国の歴史家ジョン・ダワーさんが朝日新聞とのインタビューで核心をついた発言をしていた。「個人の人生もそうですが、国や社会の歴史においても、突然の事故や災害で、何が重要なことなのかを気づく瞬間があります。すべてを新しい方法で、創造的な方法で考え直すことができるスペースが生まれるのです。関東大震災、敗戦といった歴史的な瞬間は、こうしたスペースを広げました。そしていま、(東日本大震災による原発事故によって)それが再び起きています。

しかし、もたもたしているうちに、スペースはやがて閉じてしますのです」と。なんという見識。彼はさらにこうも付け加えている。「既得権益をまもるために、スペースをコントロールしようとする勢力もあるでしょう。結果がどうなるかは分かりませんが、歴史の節目だということをしっかり考えてほしいと思います。」

アベノミクスは確かに株価と為替を好転させ、2020年東京オリンピック開催決定は多くの国民に久しぶりに明るい希望を抱かせる出来事となった。しかしそれでメルトダウンという人類史上最悪の原発事故の危機が消え失せたわけではない。

だが、私たちは「もたもた」した。もたもたしているうちに新しい未来を創造的な方法で考えるスペースがどんどん閉まってしまい、まるで東電福島原発事故などなかったような錯覚に陥っている。まさに喉元過ぎれば熱さ忘れるである。そんな時に細川・小泉元総理ペアがその大切なスペースを再びこじ開けようとしているのではないか。

自民党幹部や政権のポチとなったマスコミは口をそろえて原発を考えるのは政府であって東京都ではないと主張する。馬鹿を言うのも休み休みにしてほしい。選挙の争点を決めるのは有権者だろう。小泉氏が、東京都知事選は原発ゼロでも日本は成長していけるというグループとそれは無理だというグループの闘いだと言ったのは事の本質をついた卓見だ。

しかしそれをマスコミは二者択一を迫る小泉流の作戦だと矮小化しようとする。それだけではない。自民党や産業界の片棒を担ぐマスコミや不勉強なコメンテーターが細川氏の20年前の佐川急便からの1億円借金について「説明を求めよ」などと叫んでいる。どうせテレビ局からもらった新聞記事の寄せ集めを読んだ程度の知識なのだ。こんな連中が世論を左右するのだから始末に悪い。

細川氏が佐川急便から1億円借り入れたのは首相時代(20年前)ではなく、31年前熊本県知事選挙に出馬する前のことだ。自民党を揺るがした東京佐川急便事件とまったく無関係だったが、自民党が細川氏を退陣に追い込むためにしつこく追及しただけだと当時の自民党幹部自身が後に認めている。そのぐらいのことはマスコミや"有識者“がちゃんと説明すべきでなないのか。

もう一度ジョン・ダワー氏の言葉を思い出そう。「突然の事故や災害で何が重要なことなのか気づく瞬間があります。すべてを新しい方法で、創造的な方法で考え直すことが出来るスペースが生まれるのです。・・・しかし、もたもたしているうちに、スペースはやがて閉じてしまうのです。」

【コラム「世界の風を感じて」より】

※Photo:Photo : Tokyo Metropolitan Government Building no1 Tocho 07 7 December 2003(Wikimedia Commons /Author:Morio)