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【第5弾】松江介護詐欺 がん患者被告に冷酷非情な取り調べ(今西憲之)

 松江署に今も拘束され、面会や手紙すら自由にできない田窪紘子被告の「叫び」が書かれた被疑者ノート。松江地検が起訴できなかった、第1次逮捕の取調べから、否認を貫く紘子被告に冷酷非情な取り調べを行っているのがよくわかる。

 2013年10月2日に再逮捕されても、否認を続ける紘子被告。
 2013年10月5日の被疑者ノートでは
<最後にあなたがどうなるか、考えた方がいいですよ>
 と島根県警の取調べでそう、言われたと書いている。

 だが、松江地検、島根県警の追及にも罪を認めない紘子被告。被疑者ノートを見てゆくと、そんな紘子被告を自供に追い込もうと、とんでもない取り調べをしている状況が浮かび上がってきた。

 10月6日の被疑者ノートでは、
<具体的にどのように取り調べられたのか>
 という欄では
<長男、長女、次女にすまないと思わないのか。みんなが困っている、仕事ができなくなりますと言われた。もしも裁判になると子供がこまる事になりますよとも言っていた>
<裁判になったら勝てると思っているのか。裁判で負けたら会社(いずみ)がなくなるし、娘も困る>
 とあるのだ。

 事実関係、記憶は関係ないとばかりに、取調官は、事件とは関係ない子供をネタにして脅し、ストーリーにあうような供述を紘子被告に求めている様子が手に取るようにわかる。

 10月7日付では、
<社員はみんな仕事を探しますよ(会社がなくなる)>
 と家族で「効き目」がないなら、社員をネタにする取調官。それでもダメなら
<田窪さんが全部、責任をとられるのが本当です>
 と島根県警の村尾という取調官から説得を受けたとある。

 記憶に基づき事実を供述、それを録取して調書にまとめるのが、取調べだ。記憶や事実関係など関係なしに、責任を押し付けるというのは実におかしい。


 島根県警、松江地検は否認の態度がかわらない紘子被告。この日以降、事実や記憶を聞くより、
<素直になられたらどうですか>
<このままでいいのか>
 となだめすかしながらも、
<裁判になりますよ>
<頑なになにも知りませんと言われても裁判は許しませんよと言われた>
 と恫喝するような、取り調べをするようになる。

 10月9日付では、島根県警の村尾刑事について、こんな記載もある。
<供述に印をしなかったら、機嫌が悪くなられる>
 翌日10日には
<今日の村尾さん機嫌が悪かった。私が昨日印をしなかったからだと思う>
 供述調書にサインしなかったら、取調官の機嫌が悪くなったという意味だ。調書にサインをするかどうかは、被疑者の自由。村尾刑事はストーリーにあった、都合のいい調書にサインさせようとしていたのではないか。

 12日のものには
<すごい目つきで借金もあるし、最後はどうなるのかな>
<認めてきれいになってここから出よう>
 それでも、認めない紘子被告。体調は悪化する一方。
 水がほしいと言っても
<真実を言ってから>
 と水と供述を引き換えにしようとするのだ。
 そして、十分な治療を受けることもできず、食欲がなく食事がとれなくなってきた紘子被告。

 10月18日に松江市立病院に緊急入院。その後、大腸ガンであることがわかり、手術を受けたのだ。
「利益誘導、恫喝があることは被疑者ノートでよくわかる。接見では、取調官に机をガンガン叩かれるとも紘子被告は言っていた。明らかに供述の強要。違法な取り調べだ」
 と紘子被告の弁護団。

 1月17日、紘子被告がなぜ拘束されたままなのか、その理由を問う勾留理由開示請求が松江地裁で行われる。捜査もほぼ終結、証拠物はほとんど島根県警と松江地検にある中、隠滅の恐れもない。松江地裁は何を理由に、拘束を続けると答えるのだろうか。

【松江介護詐欺事件】
2012年秋、島根県松江市の介護事業会社、いずみの田窪紘子被告が逮捕、起訴された。介護事業の得られる生活支援給付金を不当に請求し、余分に得たという詐欺容疑。しかし、いずみは年商8000万円ほどあり、詐取した金額が約15000円と不自然なもの。紘子被告は、否認を続け争っている。ゆえに、ガンで緊急手術を余儀なくされたにもかかわらず、ずっと拘束されたままの状態が続いている。