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【第3弾】非人道的取り調べか? 72歳のがん手術の母を再収監(今西憲之)

10月18日、田窪紘子被告は松江警察署の留置場で体調不良を訴えた。その5日ほど前から、食事をとっても嘔吐し、ほとんど栄養補給ができていなかった。紘子被告は逮捕されるのははじめてで、72歳と高齢だ。そして、詐欺容疑は否認していた。

体調不良で紘子被告は、松江市民病院に運ばれた。検査を受けたところ、腸閉そくという診断であった。さらに、その原因を調べると、腫瘍が見つかり、大腸がんであることがわかった。

執行停止を受け、紘子被告は、松江市民病院に入院。11月4日に家族に説明があり、7日に開腹手術を受けた。病理検査後、ステージ2だと診断。手術では、約25cmを切開したという。紘子被告にとっては、かなりのダメージだったと思われる。

執行停止期限は11月25日までだったので、退院を余儀なくされ、松江警察署の留置場に戻された。紘子被告の娘によれば
「術後の切開した創部の傷口がなかなか治癒しなかった。感染症もあった。体重は10kgほど減少した」

紘子被告の子供は医師免許を持っている。その観点からも、とても収監に耐えられる状況ではなく、主治医もさらなる入院加療を求めていた。

だが、松江地検は執行停止の延長は認めず、松江警察署の留置場に再度収監し、取り調べをはじめた。一方で、紘子被告は、11月26日、27日、28日、29日、週末をはさんで今度は12月2日と連日、創部の傷口の治療のために松江市民病院に通院している。また、抗がん剤の投与も受けるようになった。

これまで、2度、紘子被告は保釈請求をしたが、認められなかった。不正請求で詐取した金額は15,000円あまり。捜査は終了している。なぜ、拘束を続けなくてはいけないのか。

松江地検は求釈明で、拘束を続ける理由をこう書いている。
<自ら指示して組織的に同様の行為を繰り返して公金を詐取>

だが、起訴されたのは第2次逮捕の事件のみだ。繰り返しなどしていない。保釈許可の可否は裁判所が下す。検察の求釈明も裁判所宛て。事実でないことを書き、紘子被告の悪性立証しているようなもの。

<余罪が見込まれ追起訴の見込みもある>
捜査は終わっているのだ。紘子被告が起訴されて1か月が経過する。追起訴があるなら、なぜ早急にしないのか。遅れることは被告人の利益を著しく侵害、弁護側の防御権にも影響する。

<口裏合わせを行ったり(中略)証拠を隠滅させるべく威迫の恐れ>
<被告人と面会している娘らを通じて、各従業員らに(中略)圧力>
そうも求釈明には書かれている。

だが、口裏合わせを行っている事実はない。松江地検は、紘子被告が逮捕された時にサービスを受けていた利用者の動揺を抑えようと、詳細を知らない家族が十分な理解なく説明した内容が「口裏合わせ」としているそうだ。

証拠の隠滅にしても、家宅捜索で大半の書類が押収され、いずみには何も残っていない状況。
「私たちは何度か、入院中に母と面会。医者で自分の仕事があり、いずみのことはまったくわからない。口裏合わせも圧力もかけようがない」と、紘子被告の娘は、そう怒りをあらわにするのだ。

保釈されないばかりか、弁護士以外との面会すら認められない状況なのだ。起訴事実を認めないと保釈や面会を許可しない、まさに「人質司法」の餌食になっているのだ。

それは、松江地検の求釈明にある<否認している>という言葉でも十分にうかがえる。
江渕検事がいう<私は人々の命や幸せを守りたくて検察官になったのでした>(http://www.asahi.com/area/shimane/articles/MTW20130619331060001.html)(朝日新聞デジタル 2013年06月19日)

まやかしである。

(了)