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遺伝子とガンの関係を発見したジャネット・D.ローリー博士逝去(大貫 康雄)

日本では安倍政権の民主主義否定に向かう政治に国民がとらわれている間、アメリカで遺伝子とガンとの関係を発見し、現代のガン研究と治療に多大な貢献をした研究者が12月17日、88歳で亡くなった。ジャネット・D.ローリー(Janet D. Rowley)博士。といっても御存じない人が多いと思うので、彼女を偲び、その業績を簡単に振り返り冥福を祈りたい。

NYタイムズによると、ジャネット氏は1972年(47歳の時)、ある種の型の白血病が二つの染色体の遺伝子情報の異常な交換によって引き起こされることを発見した。これはシカゴ大学の教授だった夫ドナルド氏のサバティカル(一種の有給の長期休暇制度)中のことで、オクスフォード大学の研究者たちなどとの交流を通じて、染色体の写真を細かく裁断して検証した結果だった。この発見がもとになって、ガンが遺伝子の病気であることが確認され、また特定のガンに対する薬学療法も開発された。

しかし、女性差別が当たり前のような時代、シカゴ大学でもすでにわずかしかない女性枠が定員になっているとして、教授としての採用は持ち越された。結局、ジャネット氏が教授に任命されたのは5年後の1977年、52歳の時だった(氏は23歳で医学博士号を取得している。また、4人の子どもを育てながらの研究生活であった)。

さらに、ジャネット氏の研究・発見が先進的すぎていて、他の研究者によって証明されるのは10年後のことになる。

博士はこうした業績によって、クリントン大統領からアメリカ国家科学賞を、またオバマ大統領から自由勲章を贈られるなど、いくつもの賞を受賞。シカゴ大学は、博士のために人間遺伝子学部を作っている。

今、我々は当たり前のように遺伝子とガンの関係を研究し、治療法を開発し、多くの人たちが救われている。博士の業績を忘れることはできない。

[caption id="attachment_17942" align="alignnone" width="158"]故ジャネット・ローリーさん 故ジャネット・ローリーさん[/caption]

by U.S. federal government

[caption id="attachment_17944" align="alignnone" width="620"] シカゴ大学[/caption]

by Rdsmith4

【DNBオリジナル】