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天皇陛下傘寿のお言葉に背を向ける安倍自民党の不敬と慢心(藤本 順一)

第二次安倍内閣の発足から丸一年が過ぎた。

「一刻も早くタカ派的妄信から目を覚まし、戦後日本の歴史や国民世論と謙虚に向き合う保守の王道を歩んでほしい」とは、発足直前の昨年12月19日付本欄の結びの言葉である。景気回復、日本経済の立て直しを期待してのことだ。

その言葉どおり、前半の政権運営は麻生太郎副総理兼財務相が主導した年初の財政出動と未曾有の金融緩和、それに運も見方しての円安、株高によって輸出産業を中心に企業業績が回復し、成長率を押し上げ税収も伸びた。国民が期待する以上の成果である。通常国会閉会直後の参院選で自民党は圧勝、衆参ねじれ国会が解消したのは当然の結果だった。

ところが安倍晋三首相も自民党もこれでタガが緩んでしまった。安倍首相はいよいよ、戦前回帰の軍国少年と化して臨時国会で特定秘密保護法案を強行採決。自民党は国土強靱化の大義を掲げてかつての利権政治に逆戻りである。

総額96兆円にまで膨れあがった新年度予算案で防衛費は安倍首相の強い意向で前年度比2・8パーセント増の4兆8848億円、公共事業費は12・9パーセント増の5兆9685億円で共に2年連続の増額である。

これに対して税収は対前年比16.0%増、7年ぶりに50兆円を超えたが、だったらその分、借金返済に回してくれたら良さそうなものだが、治安、治水、防災は人の命に関わるから声高に反対はできない。

だからこそ、かねてより無駄な予算の執行を厳しくチェックできるよう予算案の審議だけでなく、会計検査院や衆参両院の決算委員会の機能権限の強化を求めているのだが、選挙制度改革同様、与野党立場を代えても国会改革はなかなか前には進まない。

「民主主義の政治体制はチェックとバランスが必要だが、与党にチェックする機能がほとんどない」

引退した元自民党幹事長の古賀誠氏が21日のテレビ番組で安倍政権の現状をこう嘆いていた。そうであれば、自民党に衆参両院の多数を与えた有権者の判断が誤っていたことになる。そして何より悔やまれるのは安倍首相に政権運営を委ねたことか。

23日、傘寿を迎えられた天皇陛下より「平和と民主主義を守るべき大切なものとして日本国憲法を作り、様々な改革を行って今日の日本を築いた」とのお言葉が発せられた。

「憲法改正をライフワークだ」と公言して憚らない安倍首相は不敬を恥じ、悔い改めることだ。

【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】

※タイトルと記事内にて「傘寿」とするところを「卒寿」と間違えておりました。
 訂正いたしました、大変申し訳ありませんでした。