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靖国参拝、同盟国も危惧する安倍総理の行動(大貫 康雄)

安倍総理は、政権発足1年となる12月26日、靖国神社に参拝した。中国、韓国だけではない。アメリカも“戦争神社(シーファー元駐日大使)”とみなし、危惧しているのを知っているはず。参拝は安倍政権のイデオロギー的性格を象徴するものだ。

安倍氏は参拝後に「諸外国の戦争犠牲者の冥福も祈った」とか「平和と人権を守っていく」などと語った。

しかし、国民の基本的人権を制限する特定秘密保護法を多くの国民が反対の声を挙げるのを無視して強行成立させた直後である。言うこととやることが反対の政治を強行する彼の言い訳を信じる人は少ないだろう。

同盟国のアメリカでさえ、“安倍政権は表現の自由、知る権利などの普遍的な価値を共有云々というが、本当に共有しているのか?”という根本的な疑問・危惧の念が提示されている。

①   NYタイムズは12月16日付で「日本の危険な時代錯誤」という題の社説を掲げた(箇条書きで紹介)

・  法の強行成立は、日本人が共有する民主主義の理解を根本から変質させる前兆

・  言葉使いが曖昧、かつ極めて広範囲、政権が政治的に都合が悪いと思うものを何でも秘密にできる

・秘密漏えいの公務員は最高10年、秘密と知らず“適当でない手段で”得、また情報を得ようとしたジャーナリストも最高5年の刑(報道の自由は民主主義に不可欠の要素、この法の危険性をいっている)

・与党自民党の石破茂幹事長は、抗議デモをテロリスト視→表現の自由に対する冷淡な姿勢

国民の圧倒的多数が法の廃止か改正を求めている

・法が報道の自由と個人の基本的な権利を侵害するとの日本国民の恐れは明らか

安倍総理は国民の懸念を傲慢に無視中谷元議員は民主主義に関する理解が恐ろしいくらいに無知(安倍政権の無知と傲慢を指摘)

・特定秘密保護法は、日本を強大な政府が国民を支配し、個人の権利を制限する“美しい国”、愛国者に支持される強い国を再建するという安倍氏の運動の一環(安倍氏のいう“美しい国”に潜む危険性を指摘)

・最終目標は、占領時代アメリカ軍に押し付けられた憲法の改正(アメリカでは、日本国憲法はベアーテ・シロタ・ゴードンさんたちが努力して日本人に贈ったと知られる)

・自民党改憲案は、基本的人権保障の条項を削除。一方で国民に国旗と国歌への尊重を強制

自由と権利に伴う義務・責務を言い、公共の秩序と公共の利益を強調(何が公共の秩序か具体的に詳述せず)

・総理大臣は非常事態を宣言し、通常の法律の効力を停止させる権限を持つ(主権者・国民の権利を制限し政府権限を強化)

・安倍氏の目的は“戦後レジームの変換”、45年以前体制の復活だと批判されている→この発想は時代錯誤でかつ危険(戦後の国際体制は、国連をはじめアメリカが主導して確立したもの。安倍氏が変えようとしている日本の戦後レジームは、民主主義国家とは逆方向だけでなく、この国際体制の打破に通じる危険を忘れてはならない)

②   NYタイムズの社説が掲載される前の12月7日、アメリカ国務省が副報道官の会見を通してではあるが“同盟関係の共有する価値”について触れる機会があった。

国務省は、特定秘密保護法成立に「情報の保全は同盟関係において重要」と、一応“歓迎”の意向を示した。

しかし同時に、日本国民の強い反対を無視して強行成立させた経緯を懸念、“同盟関係は根本に表現の自由、報道の自由(知る権利に繋がる)という普遍的な価値観がある”とあえて述べ、さらに特定秘密保護法が「国民の自由の権利」を侵害しかねない危険性を有するものであると“懸念(本音)”を表明している。

アメリカは日本と互いに認め合う“同盟国”ではあるが、今年の春以来、メディアだけでなく議会図書館の調査局も安倍政権の国家主義的体質に警戒の念を表してきた(この欄でも詳述した)。

外国政府、まして緊密な関係にある同盟国の政府が相手国の内政についてあからさまな懸念を示したりするのは外交上滅多にない。アメリカ国務省副報道官の見解には安倍政権に対するアメリカ政府の戸惑い以上の強い危惧の念が見て取れる。

安倍氏は口先では民主主義と人権の価値の共有を言うが、やっていることはその逆だ。特定秘密保護法強制成立に次ぐ今回の安倍氏の靖国参拝は、安倍氏がしきりにいう“同盟国アメリカ”の懸念さえおしはかれない安倍政権のイデオロギー的性格がもろに現れた事件だ。

我々日本人は今、民主主義とその価値観を否定し、国民多数の意向を平然と無視し、同盟国でさえも軽視するイデオロギー政権を作ってしまった。

【DNBオリジナル】

by kakidai