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JNNのスクープ、拉致証拠写真が崩れた!?(辺 真一)

12月21日のTBS『報道特集』をみて「おやっ?」と思った。番組の最後のほうで突然、1962年に失踪した加瀬テル子さんに関する「お断りと訂正」あったのだ。

今から9年前の10月、JNNのスクープとして「北朝鮮から脱北した人物から提供された写真と、42年前に千葉県で失踪した17歳の女性の写真。取材の結果、この2人が同一人物である可能性が高いことがわかった」と報道されたのを鮮烈に覚えている。

写真を持参していた脱北者は「この写真の人は日本人女性で、北朝鮮に拉致されてきたと聞いています。今は日本人の拉致被害者と北朝鮮で家庭を持っています」と語っていた。

日朝首脳会談にも同行した法人類学の第一人者でもある東京歯科大学の橋本正次助教授が、この写真について「両者を別人とするような相違はなくて、なおかつ両者の類似性、酷似性が非常に高い」と鑑定したことで、この脱北者が持参していたもう一枚の写真(埼玉県川口市の藤田進さんとおぼしき人物が写っている)が唯一の「証拠写真」とみられていた。

ところが、古屋圭司拉致担当大臣が17日の閣議後会見で「警察庁の捜査の結果、女性は加瀬さんと別人であることがわかった」と明らかにしたのだ。拉致された可能性がある行方不明者を担当する特別指導班が今月、写真の女性に面会し、加瀬さんではなく、日本人でもないことを公的書類で確認したそうだ。脱北者でもなかった。

思い起こせば、この脱北者は確か、翌年の2005年1月にも1968年に失跡した北海道稚内市の斉藤裕さんと77年に鳥取県米子市で失踪した松本京子さんであるとして二枚の男女の写真を提出し、それを報道特集が取り上げたが、その後、二人とも別人、それも韓国に在住していることが分かった。この脱北者は当時、「金が欲しかった」と間違った情報を渡したことを認めていた。

今回、この加瀬さんの情報も間違っているとなると、拉致の可能性が濃厚とされている藤田進さんの写真の検証も必要となってくる。

JNNが「スクープ」した当時、警察庁の漆間巌長官は、この写真について「証拠的にも重要と認識している」と指摘したうえで、「どこで、どういう状況で撮影されたかの経緯を聞けないと、果たして北朝鮮で撮影されたのか分からない。脱北者から直接、話を聞いてみたい」と語っていたが、警察は9年かけて調べ上げたことになる。

拉致問題は何よりも、事実の究明、即ち、安否の確認と拉致の有無を確認することが優先、先決されなければならない。

Kok Leng Yeo from Singapore