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EU議会、米盗聴事件でスノーデン氏へのビデオ事情聴取を決定(大貫 康雄)

アメリカNSA(国家安全保障局)による各国首脳から一般市民の通話記録まで行っていた盗聴・傍受事件。

国会審議とマスコミの報道を見る限り、日本ではすでに忘れられている感じだが、ヨーロッパはこの事件を忘れていない。さらに新しい対策を打ち出す。

総選挙から3カ月、近く成立するドイツの第3次メルケル政権は、首相府に情報調整官(仮称)のような役を新設し、議会と共に内外機関による盗聴・傍受対策を向上させるとの方針だ。メルケル首相らの携帯電話の盗聴防止技術を新たに導入する構えだ。

一方、EUのヨーロッパ議会は、ロシアに亡命中のエドワード・スノーデン氏に早ければ18日にもビデオによる事情聴取を行うことを決めた。中道保守派政党は、いずれもアメリカとの関係が悪化する恐れがあるとして反対したが、中道左派や緑の党などの環境政党が“(より重要な)人権と信頼の問題”などとして押し切った。

質問項目は20項目余りになると見られる。アメリカだけでなく、“ヨーロッパ各国政府も同じように市民の通話を盗聴・傍受していたのか否か”など質問は多岐にわたるようだ。政党間で項目の調整が遅れており、事情聴取が遅れることも予想される。

ヨーロッパ議会は、スノーデン氏を直接ストラスブールの議会に招くことは出入国手続きが困難であることもあって断念、代わりに質問状を送っていた。しかし詳しく実態を把握する必要があるとして、ビデオによる事情聴取に踏み切った。

NSAによる盗聴・傍受事件は、アメリカ側もヨーロッパとの関係修復を考えているが、これまでヨーロッパほど深刻には考えていなかった節がある。ベルリンに2度特使を派遣したが、明快な謝罪はなく、情報共有の協定を結ぶ提案にも消極的だった。同盟国であれ誰であれ、アメリカが常に有利な立場に立つ基本方針サイバー技術で世界の優位にある現状維持を最優先している。

しかし、ヨーロッパ議会のスノーデン氏事情聴取が18日にもあり得る状況にアメリカ議会は憂慮。情報関係委員会の議員を17日ブリュッセルに派遣し、EU側と協議することになった。またオバマ政権は、第3次メルケル政権発足後、近いうちにベルリンに関係閣僚を派遣すると見られる。

一般市民や同盟国の首脳を盗聴・傍受することは信頼関係を損なう最大要因のひとつだ。何も対策を講じない限り、相手に軽くみられることはあっても信頼関係は維持できない。ヨーロッパは欧米関係が良好に維持されるためにも真剣な対応が必要だと考えている。日米同盟が最も重要な関係というのであれば日本人の我々も信頼関係のあり方をもっと真剣に考える必要がある。

【DNBオリジナル】

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