日本のタバコ規制は発展途上国なみ「東京五輪はぜひ全面禁煙で」(大貫 康雄)
日本のタバコ規制は遅々として進まない。「タバコは趣味の問題だ」と堂々と公言する政治家も数多く、宣伝・広告もまだまだ目立つ。しかし、東京オリンピック開催までに少なくとも東京周辺では具体的な禁煙策を実施する必要に迫られることは必至だ。
WHO(世界保健機関)の主導で、2005年に“タバコ規制枠組み条約”が発効した。条約では規制を実際に進めるため、具体的なガイドラインを決めている。日本も含めた世界176の国と地域が批准し、批准国ではタバコの広告が厳格に規制され、職場やレストランをはじめ公共の場での禁煙、明確な分煙が一気に進んだ。タバコの販売も急減した。
一方、日本の公共の場でのタバコ規制は諸外国と比べほとんど進まず、北朝鮮や発展途上国なみだと言われている。
厚生労働省はホームページで“ガイドラインには法的拘束力がない”と驚くような記載をしている。財務省や諸官庁、関連業界や族議員らの圧力を受けているためだ。国内法に優先して順守義務がある国際条約を軽視しているのが実情だ。
前神奈川県知事の松沢成文参議院議員は、これら圧力団体に象徴される巨大利権に支配された構造があるためだと以下のように指摘する。
1985年、専売公社が民営化され“JT(日本たばこ産業株式会社)”が発足した。民営化は名前だけで、JTの実態は財務省と密着し、政府から手厚い保護を受ける“国策会社”。
1998年には“たばこ特別税”が作られ、その税収は毎年国・地方合わせて2兆1000億円に上る。地方に1兆円が納税される(例えば港区内の店でタバコを買えば、その分の税収が港区に入る)仕組みだ。地方を利権に巻き込みながら、1兆1000億円の税収を財務省が自由にしている。
またJT株の大株主は財務大臣。株式配当と、財政投融資特別会計基金の持ち株比率も高く、財務省は毎年安定して、およそ300億円の配当金を自由にできる。
その結果、毎年200億円ほどの財政投融資は官僚の天下り公益法人に融資される。
当然、財務省とJTは蜜月状態。両者の間で“天下り”と“天上がり?”が続いている。
また、JTはIOCの基本方針を尻目に日本バレーボール界のスポンサーにもなっているという。
それどころではない。日本でのタバコ消費が将来減ることを意識し、JTは世界各国でタバコ企業を買収、国民の知らない間に世界有数のタバコ企業(有害企業)になる恐れさえある、ともいわれる。
この利権構造は、同時にテレビ・コマーシャルや新聞広告として、JTや関連業界から多額の金がマスコミに流され、タバコの害を報じるべきマスコミの口を封じているとも指摘する。
これでは人々がタバコの健康への害の深刻さを認識する機会が少なく、公共の場での禁煙が中々進まないはずだ。要するに、国民の健康より自分たちの利権が大事との発想だ(原発ムラに似ている)。
だが、東京オリンピック開催が決まり、受動喫煙の禁止など実効力のあるタバコ規制を進める絶好の機会だと松沢議員は以下のような経緯を述べる。
IOCは1988年カナダのカルガリー冬季大会以後“オリンピックは禁煙”の原則を掲げ、2010年7月には“健康な生活様式とタバコのないオリンピック”を目指すことでWHOと合意文書を交わしている。
これより、2008年の北京オリンピックを前に、中国政府は北京などの公共空間でのタバコ規制に乗り出し、以後全土にタバコ規制を広めている。
タバコ規制が進まなかったロシアも、来年早々、ソチ冬季オリンピックに向け、公共の場での禁煙を宣言している。
日本も東京オリンピック開催決定を機会に、国民軽視のタバコ利権を考え直す機会にするべきだろう。
注)日本では松沢議員が知事時代の2010年、神奈川県が“受動喫煙防止条例”を成立させた。県内の学校、病院、官公庁施設などの公共施設は禁煙。飲食店や宿泊施設など民間の施設は禁煙、または明確な分煙にした。注意、勧告を受けても違反行為を止めない事業者や個人には行政罰を課すことになった。
次いで2013年、兵庫県が同じような受動喫煙防止条例を可決施行している。
【お知らせ】
12月17日(火)19時から放送の番組『大貫康雄の伝える世界』(http://ch.nicovideo.jp/uesugi)では、タバコ規制が進まない問題で松沢成文議員がスタジオで語ります。ぜひ、ご覧ください。
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