重要法案の審議時間を比較すると特定秘密法案の拙速・乱暴さが際立つ!(大貫 康雄)
国民の基本的権利を侵害する可能性が濃厚な「特定秘密保護法」を満足な審議もせずに強行採決した安倍晋三総理と石破茂自民党幹事長の2人。国民の支持が低いのにあわててか、“秘密の範囲が広がることはない”とか“通常の生活が脅かされることはない”などと法律制定後に弁明をし始め、これから1年かけて不安を取り除く補完措置(?)を設けるようなことを言っている。
ふだんはあまり声を上げない日本人の多くの人が反対の声を上げたのに、そんな声を一切無視するような乱暴な国会運営のはての法律制定
1年間期待を抱かせて支持率を維持したいのかどうかわからないが、いまさらの弁明を信じるお人よしが一体いるのだろうか。
安倍総理は“十分審議を尽くした“というが、これまでの重要法採択までにどのくらい法案審議をしたか、彼は知っていて言ったのだろうか?
元毎日新聞記者の藤井晨氏の調べによると、重要法案の衆参両院での審議時間はそれぞれ以下のようになっている。これをみても、特定秘密保護法の審議がいかに拙速だったかわかる。
●小泉政権「郵政民営化関連」:(衆)120時間32分/(参)93時間6分
●第一次安倍政権「改正教育基本法」:(衆)106時間27分 /(参)84時間14分
●第一次安倍政権「国民投票法」:(衆)52時間19分/(参)53時間34分
●野田内閣「消費増税法」:(衆)129時間8分/(参)85時間37分
●第二次安倍内閣「特定秘密保護法」:(衆)45時間54分/(参)21時間54分
時間をかければよい法律ができるというわけではなく、最初から悪法を審議することもある。それでも上の一覧を比較すると特定秘密保護法の審議がいかに拙速、乱暴だったかがわかる。
加えて、担当の森まさこ少子化担当大臣(なぜ、少子化担当大臣が特定秘密保護法の担当なのか?)の答弁が意味をなしていなかっただけではない。総理以下、政府・自民党幹部たちが、国民生活を考えて自分たちで作ったとは到底思えない。恐らく官僚が作った法案だろう。それも、きちんと読んで考えたのか否か、疑問ばかりわく答弁や発言が続いた。
一連の発言が、いずれも抽象的な言い方なので信用できない。なぜ具体的に説明できないのか?
“秘密の範囲が広がることはない”というが、具体的にどこまで秘密にするのか言おうとしない。“通常の生活が脅かされることはない”というが、通常の生活とは具体的に何を言うのか? 毎日3度の栄養豊かな食事を取り、人間らしい生活を維持できる報酬のある生活なのか? 残業もなく毎日家族だんらんのひと時を持てる生活なのか? 自由に意見を述べても職場で差別的扱いを受けない生活なのか?
政治は禅問答ではない。誤魔化しがきかない具体的な言い方をして国民の信を問うべきである。
これから、もっともらしく秘密監視機関を設けると言っても、いかなる人物が監視機関を担うのか?
例えば人権問題で世界的な信頼がある弁護士なり研究者を任命し、自由に独立した立場で判断できるのか?
民主主義社会の根幹を損ねる危険性のあるこの法律、基本的に廃止するべきとの前提を踏まえた上で、誤魔化されないよう政治を監視し、声を挙げていくことが肝心だ。
【DNBオリジナル】
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