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安倍ー石破コンビに汚され歪められた日本の保守政治(藤本 順一)

自民党の石破茂幹事長が自身のブログ(11月29日付)で特定秘密保護法案に反対するデモなどの抗議行動を「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない」と断じた。また、1日の講演では「人が恐怖を感じるような音で、絶対にこれは許さない、と訴えることが、本当に民主主義にとって正しいことなのか」とも述べている。

まさにこれこそが前回、本欄が指摘したとおり、衆参両院で絶対安定多数を得た安倍政権の驕りであり、エセ保守政治家の増長に他ならない。

国民の声に謙虚に耳を傾けることこそが保守政治の神髄であり、戦後民主主義の拠り所でもあろう。それを五月蠅いと感じるのは石破氏が聞く耳持たないからであって、それをテロと同質に論じることに国民はむしろ民主主義を否定する独裁者の恐怖を感じるのである。

石破氏だけではない。朝日新聞社が行った直近の世論調査で国民の50パーセントが特定秘密保護法案に反対、継続審議を求める声は56パーセントに達している。おそらく、審議を尽くすほどにこの法案のいかさま具合が国民に知れ渡り、反対の声が今以上に勢いを増すことになろう。

そうであればここはやはり、国民世論に従い、継続審議にすることが権力を握る者の分別というもの。

ところがエセ保守政治家は、こんな民主主義のイロハすらも理解せずに、法案成立にひた走る。仮に継続審議となれば、強行突破を主導した菅義偉官房長官の責任問題が浮上することになるからだ。さらに年明け通常国会、勢いを増す国民世論に抗しきれずに最悪、廃案に追い込まれてしまえば、安倍内閣そのものがもたなくなるから退くに退けない。詰まるところ国家国民のことよりも我が身大事のエセ保守政治家たる所以である。

ついでにいえば、安倍晋三首相が国民世論の反対を押しきってまで強行採決にこだわるのは、60年安保改定を強行した祖父・岸信介元首相への憧れもある。きっと今頃、国会周辺をデモ隊に包囲され、決死の覚悟で安保改定を成し遂げた祖父の姿を自らに重ね合わせて悦に入っていることだろう。しかも、それが保守政治家のあるべき姿だと勘違いしているのだからなおさら、この政権は始末が悪いのである。

【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】

Photo : Shinzo Abe at CSIS(Wikimedia Commons /Author:Ajswab)