12月5日未明、国会本会議における筆者の反省(おしどりマコ)
2013年12月4日、筆者は、参議院議員会館まわりを取材していた。
国会の前での、特定秘密保護法案反対のアクションや、会館の中での議員まわりのアクションをされている方々などの取材、福島第一原発事故の疎開裁判の記者会見などである。
しかし、そのことをまとめる前に、筆者は反省文を書きたい。
昨日の本会議は、強引な議事進行により変則的な時間に開催された。
夜21時から再開され、23時に「次は5日0時10分より再開します」
筆者は耳を疑った。5日の12時ではなく、0時、つまり、5日の未明から始めるというのである。
4日は、強引に埼玉での地方公聴会をはさむことになり、21時から再開となった本会議は、ただでさえ、傍聴人は少ない。
21時からの本会議は議員秘書以外の一般傍聴は、8名であった。
0時からの一般傍聴に再び来た者はさらに減る。
戸籍法の一部を改正する法律案についての採決が終わると、さらに傍聴人は帰り、筆者ともう一人の女性の2人だけになった。
その後、野党から岩城光秀参議院運営委員長の解任動議が出され、与党から水岡俊一内閣委員長と大久保勉経済産業委員長の解任動議が出された。
これは全く正反対の意味合いを持つ。
強行採決や、強引な議事進行をせず、もっと議論を重視した議院運営をすべき、と野党が与党の委員長の解任動議を出し、
一方、各委員会の中で、2つだけ野党が委員長をしていた委員会の委員長を解任し、首をすげかえたい、という与党からの動議である。
異例の徹夜審議の末、結果は、全て、与党の議員が委員長になった。
********
筆者の反省はここからである。
岩城光秀参議院運営委員長の解任動議の際、民主党の前川清成議員の主旨説明が続く中、自民党議員のすさまじい野次があった。議論に関する野次はわかる。しかし、
「空気を読めよ!」
「聞きたくねー!」
「入院しろ!」
などという自民党若手議員の野次は酷かった。どの議員がどういう野次をとばしているのか、乗り出して顔を確認したかったほどだ。(きちんと傍聴席にて座らねばならないため、酷い内容の野次をとばす議員の確認はできなかった。)
「入院しろ!」とはどういう意味なのか。まるで、いじめに通じるような内容である。
これが、国の立法の最高機関か、と思うと心底情けなくなった。
前川清成議員の主旨説明は、しだいに
「今、ヤジっておられる自民党の若い議員のみなさん、ご存知ですか」
「若い自民党議員のみなさん、真面目に聞いてください」
とはっきり名指しで語りかける内容になっていく。
「参議院議院の存在理由が今、問われています。
議論から逃げて、数の力で野党を押したおそうとする、乱暴な議院運営に声をあげなければ
参議院なんていらない、という声がわきあがることは必至です
今国会は53日間、この短い期間で、昨日も4回、議院運営委員会委員長の名において、問答無用の多数決で強行採決されました。
53日間で11回の強行採決、議論がなされていません。
まるで、議院運営委員会が開催されるたびごとに、強行採決が行われています。
しかし、良識の府、参議院、言論の府、国会がなすべきことは、議論をつくすことです。
議論を避け、何から何まで多数決で押し切ってしまうのであれば、衆議院に480人、参議院に242人もの国会議員を選挙で選ぶ必要はありません。
選挙で、ただ一人選べば足りるはずです。ただ一人の独裁者を。
政府与党には政治を動かす責任があります。
議論を尽くしたあとに、最終的には議員運営委員会において、採決によって、議事を決すること自体否定しているのではありません。」
このような内容であった。
続いて三原じゅん子議員の反対討論が続く。
「周りの会派は、偏屈な民主党の、ひとりよがりの横暴な行為を冷ややかな目でみているのであります。」
「民主党は蔑みとひんしゅくをかっていることを強く認識すべきであります」
「民主党には反省することもなく自浄作用も倫理観も良心のかけらもないことを知りつつ、」
などなど、筆者は決して民主党を支持しているわけではないが、聞いていて、気持ちの良くない謗言が続いた。
そのたびに、先程野次をとばしていた若い自民党議員の方々はさらにヒートアップして盛り上がっていく。
三原じゅん子議員の反対討論が終わり、席に戻られるとき、気が付くと筆者は立ち上がって声を出していた。
「強行採決ばかりで、野次るだけの人間は恥を知りなさい。
国民は見ています。
議論をせず、野次るばかりの人間は恥を知りなさい。」
たった二人しか傍聴席にはいなかったが、深夜の1時前であったが、国民は見ているのだ。
思わず、議員席から大きな拍手と「そうだ!」「そうだ!」という声を頂いたが、
もちろん重大なルール違反である。すぐに拘束され退場した。
参考
http://twitcasting.tv/nminoshima/movie/27697052
34分30秒以降に筆者が違反をしてしまう。
しかし、この夜の審議はぜひ、大勢の方々に見てほしい。
********
筆者は本会議中に大声を出したことについて深く反省している。
この重大な過失のために、多大な迷惑もかけてしまった。
国民のパブリックコメントを無視し、地方公聴会を形だけのものにし、
強行採決ばかりで議論をせず、野次ばかりとばす与党議員が多いことや、
野次の内容のあまりの酷さにカッとなったこともあるが、
声を出したことは重大なルール違反であることを自覚している。
今後は、このような重大な過失は二度と繰り返さないように決意したい。
********
筆者は、不勉強なので、今になって、各国の政治、歴史を勉強している。
中東、中南米にも興味を持っているが、カナダにも非常に関心がある。
カナダの「熟議民主主義」でもって、核廃棄物問題などについて倫理的政策を形成していく文献は興味深かった。
「熟議民主主義」の重要な要素は、「正当とするに足る合意は、対話に由来する」
そのような対話では、決定の結果によって影響を受ける可能性があるすべての人々が、彼らの経験や専門知識を自由に利用して、互いに自らの視点を交換し、最終的には決定力を行使する。
熟議民主主義の本質とは、人々を拘束し影響を与えるような公共政策や諸制度に関して、その実質的な諸条件を人々が自由に決定することである。
熟議民主主義の理念は、相互理解と、しかるべき情報にもとづく合意である。
情報にもとづいた公衆による熟議に必要とされる、認識を深めるための情報源に平等に接近できなければならない。
しかし、現在(5日15時)特定秘密保護法案に関する国家安全特別委員会が開催されているが、
「このような法案を20時間で議論するなんて時間が短すぎる」
「なぜ、この法案に関する情報を最近まで出さなかったのか、以前から要求していたのに」
「もっと国会で議論すべき法案である。国会議員全員にこの情報を配布し、議論すべきである」
などなど、全く熟議民主主義の足元に及ばない議論が続いている。
********
ブラジルの教育者、パウル・フレイレの警告が、今ほど身に染みることがあるだろうか。
「関わらないのは中立ではない。
力の無視は、世間知らずか、ずるさの証拠。」
力のある者と、力のない者の争いを周りで見ていることは中立ではない、
力のある者の味方をすることである、と説いたパウル・フレイレ。
力のある者を、自分の責任と判断において支持するのはいい。
しかし、傍観者は中立ではないのである。
特定秘密保護法案に始まる、様々な問題点があるいくつもの法案、政策。
筆者は、世間知らずにもずるい人間にもなるつもりはない。
ぜひ、みなさんも、参議院での審議をインターネット中継で、ご自分の目で見て頂きたい。
参議院インターネット審議中継
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
ミラーサイト
http://twitcasting.tv/wasabine
(しかし、声を出す場合は、絶対にルールの範囲内で!!!!!)
【DNBオリジナル】
追記
16時すぎ、特定秘密保護法案に関する国家安全特別委員会が終わった。
もっと議論を!と言う議員の声もむなしく、強行採決となり、議員が委員長の元に走り、混乱の中、委員会の中継動画は終了した。
本国会中、12件目の強行採決である。
与党のスケジュールでは、5日の委員会で強行可決し、6日の参議院本会議で強行可決、成立させる方針だという。
なぜ、議論ではなく、このような数での暴力的な政治なのか。
多数決は民主主義ではない。
「合意形成」が民主主義なのである。
熟議民主主義の理念をもう一度書く。
「正当とするに足る合意は、対話に由来する」
この理念からいうと、混乱の中の強行採決は、正当に値しない。
(写真は国会前のアクションを取材する筆者、撮影:おしどりケン)
【DNBオリジナル】