ねじれ国会解消で増長するエセ保守政治家(藤本 順一)
衆院の強行採決から一夜明けた27日、特別秘密保護法案をめぐる論戦の舞台は参院に移った。安倍晋三首相はこの日行われた本会議の答弁で特定秘密が恣意的に運用され、報道の自由、国民の知る権利を侵しかねないとする同法案への懸念について「専門的な識見を有する有識者を適性に人選し、その意見を踏まえ実効性のある運用基準を作成することにより、本法案の適正な運用が確保される」と従来通りの主張を繰り返した。
はたしてそれで国民の不安が払拭できるものかどうか。有識者の人選はもちろんのこと、法をどう解釈し、どう適用するかを判断するのが時の権力であれば、客観性を担保することはできない。安倍首相が憲法解釈を恣意的にねじ曲げ、集団的自衛権の行使が可能だと主張しているのが、何よりの証左だ。
安倍首相はこの前日、記者団を前に「国民の安全を守るための法律だ。参院審議を通じて国民の不安を払拭していくよう努めたい」と述べていた。また同じ日、自らが会長を務める超党派議連「創生日本」の研修会では「誇りある日本を取り戻すことはまだスタートしたばかりだ」とも述べている。参加者は保守政治家を標榜する国会議員ら約400人。その一人、安倍ガールズの稲田朋美行革担当相が「戦後レジュームからの脱却を現実にしたい」と訴えていた。
特定秘密法案はその第一歩というわけだ。どうやらこの人たちは戦後日本の民主主義を否定することが保守政治家の使命のごとく、大きな勘違いをしているようだ。
「気狂いに刃物」のたとえもある。包丁も使い方次第で凶器となろう。
今国会、会期末は12月6日まで、実質審議時間は残り少ない。安倍政権はどさくさ紛れに、高校授業料の無償化制度を見直し、所得制限の導入を決めた。農家の減反政策も見直される。来年度からは消費増税に加え、国民年金や介護保険、医療費などの社会保障費の負担増も待ったなしだが、この分では年明け通常国会も数にモノを言わせた強引な政権運営が続きそうだ。
衆参ねじれ解消で政治の安定と景気回復を望んだ多くの国民はきっと裏切られた思いだろう。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】
Photo : Diet of Japan Kokkai (Wikimedia Commons /Author:Wiiii)