安全は「神頼み」 福島第一原発4号機 燃料取り出しの恐怖(DNB編集部)
福島第一原発4号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出し作業が18日午後から始まった。新聞・テレビなど大手メディアは東京電力が発表した資料を元に「廃炉へ新段階」などと事実と工程のみをノーテンキに報じているが、この作業にはとてつもない危険リスクがつきまとう。
4号機は1~3号機と違ってメルトダウンは起きていない。だが、水素爆発でめちゃめちゃに壊れた建屋上部にある燃料プールに1533体もの燃料棒が残されたままになっている(うち未使用は202体)。建屋が倒壊する恐れもあり、燃料棒の取り出しは一刻を争う急務とされきた。
ところが、事故を起こした原発での作業は世界初で何が起こるかわからない、危険きわまりないものなのだ。
まず、燃料棒を水中から取り出し、燃料棒が入るキャスクとよばれる金属容器に収納し、大型クレーンで吊り上げトレーラーに運ぶ。こんな微妙で複雑な作業を不安定な状態の中、作業員の経験と勘だけで進めなければならないのだ。燃料棒がちょっとでも水中から露出したら、それだけで作業員は深刻な被曝を覚悟しなければならないという。
もっとも恐ろしいのは、クレーンからの落下である。22体の燃料棒がギッシリ詰まり、約100トンもあるキャスクが地上に落ちれば、想像を絶する事態になる。作業員が近づくこともできないまま、大量の放射性物質が大気中に放出され続けることになるというのだ。
東電によると、1533体の燃料棒が取り出しは来年末までかかるという。つまり、こんな危険な状態が1年以上も続くというのだ。
問題は、安倍政権も東電も、またもや「事故は起きない」という根拠のない“安全神話”を前提にしていること。この1年の間に再び東日本大震災並みの大地震が来ないとも限らない。だが、事故を前提とした大規模な避難計画は示されていない。事故も地震も「起きないもの」とされている。まさに神頼み。
そんな“国家の存亡”がかかった一大事が始まっているというのに、安倍政権は国会で特定秘密保護法などにうつつを抜したまま。世界で誰も経験したことのない「超危険作業」が手探りで続けられることになる。
写真:2012.7月 撮影