山本太郎の”放射脳”と”キワモノ芸”が犯した過ち (藤本 順一)
芸のない芸人がテレビカメラの前で突然、尻をまくったようなものかーーー
秋の園遊会で天皇陛下に手紙を手渡した山本太郎参院議員のことだ。
世間が騒いで本人は“してやったり”かもしれないが、国民とっては不愉快極まりない。戸惑う天皇陛下の御立場をおもんばかれば、心が痛む。
山本議員は被災地福島の惨状を天皇陛下に直接訴えることで世間の注目を浴びることに成功した。いわば、園遊会を舞台仕立てに、天皇陛下を小道具として扱ったわけだ。不敬の誹りは免れない。
さらにはこれまで天皇、皇后両陛下が御心を砕き、培われてこられた被災地住民との絆を否定することにもなる。日本国民が自らの不幸や境遇をさておき、被災地復興に心一つになれるのも天皇、皇后両陛下の存在があればこそ。その意味で山本議員の愚かな行為が被災地住民を貶めることにもなった。
もっとも、それが「天皇の政治利用」にあたるかといえば、そうではない。現行憲法が恐れているのはあくまでも皇室の威光を笠に着た政府、官僚(軍部)の暴走である。
「この方にははっきり言って議員の資格はない。自ら出処進退を明らかにされるべきだ」
世耕弘成官房副長官は2日のテレビ番組でこう述べた。
だが、むしろ政府与党が不敬を理由に政治的立場を異にする脱原発議員の辞職を迫ることこそが、まさに「天皇の政治利用」に他ならない。しかも、それがかえって山本議員の行為を正当化することにもなるのだ。
いずれにせよ、参院議員運営委員会は今週にも山本議員の処分を決める予定だ。加えてもう一人、国会会期中、許可なく北朝鮮渡航を強行したアントニオ猪木参院議員の処分も検討する。
確かに両議員の言動には国会議員としての自覚、品性が欠けているが、たとえキワモノ、チンピラの類であっても議員の身分は最大限保証されなければならない。議会制民主主義にも欠陥はある。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】