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山本太郎「天皇直訴」手紙の中身と福島の反応(おしどりマコ)

山本太郎参議院議員が10月31日の園遊会で天皇陛下に手紙を直接渡し、騒動になっている。

筆者は山本議員に手紙の内容を取材し、手紙の内容となっていた福島第一原発の作業員と福島県民、計30名ほどに取材をしたのでまとめる。

1.山本太郎議員の手紙の内容
2.福島第一原発作業員の感想
3.福島県民の感想

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1.山本太郎議員の手紙の内容

「不躾にもお手紙を陛下にお渡しする無礼、お許し下さい。」という書き出しで始まる手紙だそうである。

原発事故によって、未来を担う子どもたちが置かれている状況や事故の収束作業に関わっている作業員の現状をお伝えしたかったと話す山本議員。

具体的な内容として、

東京電力が支払う日当は一日8万円だが、最下層の下請け会社では日当が数千円になっている現状、

原発事故前と同じ法律で、原発事故後の収束作業の健康管理がなされている状況、

しかし、住民は、事故前は年間1mSVだったが、事故後は20mSVまで、となっていること、

子どもたちは大人と比べて放射線への影響が高いといわれているが、影響の因果関係を突き詰めることは難しい中、不安に思う母親が多いこと、

福島県だけではなく、東日本のホットスポットの住民も同調圧力の中、不安に思う者もいること、

などをしたためたという。


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2.福島第一原発作業員の感想

(みな男性。年代を記そうと思ったが、伏せてほしいという要望が多かったため書かない。年代によっては、人数が少ないからである)

「特に大きい話ではない、事実の1つとして受け止めた。中は(福島第一原発は)普通。特に騒いでもないし、話題にもあまりあがらない」

「代弁してくれたという思いと、やっちゃったなという思い」

「現代の田中正造だと思った。彼がしたことがいいか悪いかは、歴史が判断する。今、とやかく言うことではないし、原発事故が起こり、自分たちが作業していることは事実」

「ルール違反ではあったが、声をあげてもらえるのはありがたい」

「山本太郎を叩いている議員は、我々のために何かしてくれたのか。山本太郎を叩いている議員に、書簡の内容をどうとらえているか、聞きたい」

「ただ、ビックリ。実直なんだよね、山本太郎。福島の現状と子どもたちのことを伝えてくれたのはありがたかったけど、政治家として違う勝負は無かったのかな」

「何とかしたいと思ってくれるのはありがたいが、戦略がない。感情だけで動いてしまった感じ」

「山本太郎の気持ちはわかる。ということは庶民に近い議員だと思う。でも、庶民のルールは通用しないところで動いているので、もっとクレバーに」

「甘い。田中正造は全財産失って、やりつくしたうえで死ぬ覚悟で直訴した。山本太郎はまだやりきっていない。福島原発事故のことを考えてくれる気持ちはわかるが、直訴の前に、やれることはまだまだあると思う。ここで失脚したらもったいない」

「陛下に現状をお知らせしても、陛下はお困りになると思う。陛下はわかってくださっていると思う。でも、山本太郎の行った気持ち、何とかしたいという思いはわからなくもない」


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3.福島県民の感想
(陛下に関わることなので、地域名、年齢、性別も伏せてほしいと要望されたものは書かない)

「これだけ動いてくれる議員がいてもいいのではないか」(40代男性)

「気持ちはわかるけど、やっちゃった、と思った」(30代男性)

「直訴はわかるが、園遊会でないほうがよかったのでは」(40代男性)

「選挙が終わったら、演説、公約で話していたことを実行しない議員が多々いる中、当選後もずっと原発事故のことで動いている。そこは評価できる」(福島市60代)

「………愚直な人だと思う」(50代男性)

「山本太郎を叩いている著名人は、彼の手紙の内容をどう思っているのか知りたい」(郡山市女性)

「私たちのために、よくぞ危ない橋を渡ってくれたと思う」(いわき市女性)

「政治的利用って言っているけど、どっちが? オリンピックのために皇族が応援演説したことを私たちは一生忘れない。あれを見て福島の中にどれだけ傷ついた人間がいたか。本当にショックだった。東京都知事がキャッシュで4000億円オリンピックのための予算があると言い、皇族が応援のスピーチをし。私たちは東京のための電力をになっていた原発の事故で今も苦しんでいるんです。これ、匿名で絶対に書いてほしい」

「天皇陛下の政治利用って、どういうことだろうね? 皇族は関係ないの? 僕は、天皇陛下も皇族の方々も敬愛しているけれど、オリンピックのスピーチはショックだったよ。スポーツの祭典だから政治関係ないのかな、でも都知事や総理に並んで、皇族の方がスピーチされたのは、福島が切り捨てられた気がしたな。僕の周りにも、あのことは許さないと話す人間もいるしね」(30代)

「自分たちはノーという権利はないんですか。今、イエスだけを強要されている気がします」(双葉郡)

「山本太郎はあまり好きではないけれど、今回のことも甘いなと思うけれど、でも、もったいないと思う。だって、他に原発事故のことであそこまで動いてくれる議員はいないから。山本太郎は苦手だけど、じゃ、他に今、原発事故のことでとにかく動いてくれるだろうなっていう国会議員、他に誰がいる? 俺は相当議員に会ったけれど思いつかないね」(男性)

「まだ議員になって、何もしてないのに早すぎじゃない? 6年あるんだから焦らなくても……田中正造は死ぬ覚悟でやったけど、山本太郎は死ぬ覚悟はあったのかな? 特定秘密保護法案なんかで彼の焦る気持ちはわかるけど短慮だと思う」

「自分は、実は、誰かが天皇陛下に訴えてくれたらいい、と願っていた。どなたかに託そうかと思っていた。原発事故のことは、国連でも、WHOでもムリだ。ローマ法王に直訴に行こうか、と考えていたこともある。日本の行政も国会議員も研究者も、訴えてもダメだった。どこに、誰に訴えたらいいんだろうかと思って。」(40代男性) 


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山本太郎議員が陛下に直訴するという騒動のあと、山本議員の書簡の内容、その内容の主旨であった福島第一原発の作業員、福島県民がどのように感じたかが報じられていないので取材した。

匿名で書くことを条件に、本心を明かして頂いた。作業員の方々は年代を、福島県民の方々は地域名、年齢、性別などは記そうとしたが、陛下に関わることなのでそれも伏せてほしいと要望され、書いていない。

11月1日に、筆者が山本太郎議員の行動に対するコメントを求めているということが広まり、1日夜には作業員や福島の方々が自ら電話やメールなどで、いろいろなコメントを送ってくださったことを感謝する。

取材をして、作業員や福島県民の受け止めは

・山本太郎議員の行った行動は、軽率ではあるが、代弁してくれたという感はある

・山本太郎議員は甘いが、彼を批判している議員、著名人は、福島原発事故に関して何か動いてくれたのだろうか?

に集約されていたように思う。

特に、取材をしていてオリンピック誘致の際の皇族の方への思いに触れ、こんな激しいものだったのかと筆者は驚いた。

書こうか書くまいか逡巡した。

しかし、想いを打ち明けた方が「難しいと思うけど、書けるんだったら書いてほしい、知ってほしい」と最後に言ったこと。そして、他の福島の方数人に、このような内容を記事に書くのはためらわれる旨を相談したところ、そう考えている人間はいる、自分も同感だ、と話されたため、やはり書くことにした。

筆者は祖父が神主の資格を持ち、神事に携わっていたこともあり、天皇陛下は敬愛している。

筆者は日本を愛しているが、それは日本政府を愛しているということと同義ではないことを最後に付け加える。

(撮影:おしどりケン。山本太郎氏が参議院議員に当選した日、選挙事務所にて。)

【DNBオリジナル】