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何の議論もされないまま法制化される「特定秘密保護法」(大貫 康雄)

安倍政権は「特定秘密保護法」を閣議決定し(10月25日)国会に提出、今国会中に法成立を目指すと菅義偉官房長官が発表した。

「なぜ法制化する必要があるのか?」「なにが安全保障上守るべき秘密なのか?」菅官房長官の説明に具体性はなく、政府・自民党幹部が繰り返してきたことと基本的に同じで、抽象論でしかない。

「特定秘密保護法案」論議の不透明さ、それゆえの危険性については各方面から指摘や批判が出ているので詳細は省く。ここでは10月22日にネット上で開催された『第2回公益法人自由報道協会シンポジウム』で交わされた討論の中から、いくつかの要点を箇条書きであげておく(カッコ内は筆者補足)。

●特定秘密保護法制化の動きは、特に警察官僚が活発。日本社会が“安定化”しすぎてかつての花形だった警備公安部門のやる仕事が少なくなった。それでは組織の(縮小・解体など)今後に関わるため、関係官僚たちの利権保護、うまくすれば権益拡大のために利するべく、この法の成立を政府与党に働きかけている(国民のためではなく、一部官僚の組織維持と権益優先が目的。そのために国民を巻き添えにする訳だ)。

●おしどりケン&マコさん(自由報道協会理事)たちも警察に尾行されるようになった(あれほど堂々と健全な行動している二人を尾行するなど国民の税金のむだ使いでしかない。二人はごく当たり前のことをしているにすぎない。そんなことをするよりも刑事事件をきちんと捜査する体制を充実させるべき)。

●日本にはすでに自衛隊法、国家公務員の守秘義務の規定があって、必要以上に遵守されているくらいだ。これまで国の安全保障を揺るがすような重大な犯罪など起きていない(自民党の石破幹事長は盛んに秘密がもれるというが具体的に証拠をあげるべきだ。また30年、50年経っても秘密にする必要があるなどというが、それは国民のためではなく政府活動の隠蔽、責任逃れのための制度強化でしかない)

●日本でも近年ようやく内部告発者を保護する「公益通報者保護法」が作られているが、現実には組織を優先する風土が強い。このため、通報者(告発者)が解雇されるなど不利益を被る例が多く出ている(まして日本には、社会のために「秘密」を公にする伝統も風土もない)。

●先進諸国の中でも日本は透明性に欠ける国であり、情報公開の重要性を認識する政治家も国民も少ない。その結果、諸外国から見れば取るに足りないものまで(事実上秘密扱いで)公開されていない(日米関係など、アメリカの国立公文書館に行くと日本では公開されていないことが一定の期間後、きちんと公開されている。日本はそれだけ秘密性が高い)。

●「知る権利」の大切さを理解し、それを堅持して行こうという世論も大きくならない。マスコミの報道も軽い。

●そんな状況下で誰が“秘密にすべきだ“と判断し、誰が許可するのか? 秘密の具体的な判定基準は論議されず、査定基準も不明朗だ。一部政治家や警察官僚たちが勝手に拡大解釈をしていき、上記のように何でも秘密にされてしまう恐れがある。

●そのうち、原発関係の情報まで秘密扱いされる恐れがある。

●秘密判断の基準がなく、勝手に秘密にされ、それを公にして処罰の対象になった場合、一体裁判が成立するのか? 検察(警察)側が秘密を理由に法廷で何が法律違反なのかの説明を拒否した場合、有罪、無罪の判決など不可能だ。

●先進国家の中で、自立の度合いが低いのが我々日本人。“公益”のため自分の職を賭してまで外部に秘密を漏らすものなどいない(日本にはエドワード・スノーデン氏やジュリアン・アサンジ氏のような国家機密を暴露するような人はこれまで現れていないし、これからも現れないだろう。そんな風土なのに特定秘密程法を作ると一層国民の言動を妨げるだけで百害あって一理なし。法制定の必要はない)。

●憲法で保障する国民の代表である国会議員の調査権を奪ってしまうのに、その危険性を熟知していない国会議員が多い(憲法と三権分立の基本に反しているのは明白だ)。

●有権者が地元選出の国会議員に一人一人働きかけるのも、この法案の成立阻止には有効な方法だ。

●この悪法が成立した場合、法律自体の違憲性訴訟を各地で起こしていく必要がある。

●日本版NSC・国家安全保障会議の成立と連動している(この問題もきちんと論議されないまま進行している)。

 

一般に我々日本人は、その言葉が何を意味するのかを具体的に考える習慣がない。したがって抽象論に弱い。

現在のマスコミ報道は、“安全保障”“国家機密”“国益”“総合的に判断”などの大げさな言葉が氾濫している。しかし、それは具体的に何を意味するのか? といったことを分析・検証することもなく、垂れ流ししている印象だ。多くの人々に影響を与えるマスコミは、特定秘密保護法の議論こそ、具体的にきちんと取り上げ報じるべきだ。特定秘密保護法に限らず、重要な問題や政策課題に対する人々の無関心はマスコミの消極的な報道にも一因がある。

【DNBオリジナル】

[caption id="attachment_15782" align="alignnone" width="620"] 特定秘密保護法成立に力を注ぐ安倍晋三内閣総理大臣[/caption]

by G8 UK Presidency

from http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Shinzo_Abe_Japanese_Prime_Minister_Portrait.jpg?uselang=ja