賃金上がらず国民に重くのしかかる消費増税と震災復興税(藤本 順一)
「国の信認を維持し、社会保障制度を次世代にしっかり引き渡すことが私の内閣に与えられた責任だ。大胆な経済対策を実行することで経済再生と財政健全化は両立しうる」
消費税率の引き上げを決めた安倍晋三首相は1日の記者会見でこう述べた上で消費税収の使途を社会保障費に限定すると明言した。
是非もないが、一方で安倍首相は12月上旬をメドに5兆円規模の経済対策をまとめ、今年度の補正予算と来年度予算に盛り込むとも。それで景気が良くなり税収増につながれば文句はないが、失敗すれば、垂れ流した5兆円の財源は国債の発行か、消費税で穴埋めするしかない。そうなれば国際公約とも言える15年度の基礎的財政収支の赤字半減は困難となろう。とは考えられる最悪のシナリオだ。
そうならないことを祈りたいが、こればかりはやってみなければ分からない。後は野となれ山となれ、の消費税率の引き上げである。
また、安倍首相が次世代に引き渡すべき社会保障制度の全体像は漠としたまま、医療介護保険の負担増と年金給付額の削減だけが先行している現状では、老後の不安は増すばかりだ。さらに被災地復興の国民負担が重くのし掛かる。
復興法人税の廃止については被災地住民の反発を恐れた安倍首相が結論を12月に先送りしてしまったが、賃金給与が上がらなければ今度は負担する国民から不満が吹き出し、怒りの矛先が被災地住民に向かうことにもなりかねない。法人税の廃止ではなく、所得、住民税を含めた復興税税率の見直し、あるいは復興予算を一般財源化して消費税収の一部を充てる手もある。いずれにせよ、消費税増税後の動向を見極めてから結論を出しても遅くはない。
経済産業省が2日に「消費税転嫁対策室」を設置したそうだ。大企業が立場の弱い仕入れ先の中小企業に消費増税の負担を押し付ける「買い叩き」などの不公正取引を監視するためだが、安倍政権が集めた税金の使途について国民はこれまで以上に厳しく監視する必要がありそうだ。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】
Photo : Shinzo Abe(Wikimedia Commons /Author:Ogiyoshisan)