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中国ではPM2.5の影響で年間123万人が死亡!?(相馬 勝)

1週間ほど北京に行ってきた。9月11日が日本政府の尖閣諸島国有化1周年、18日が柳条湖事件82周年だったので、昨年のように再び反日デモが起こるのではないかと思ったためだ。

それは杞憂に終わったが、その代わり、北京ではPM2・5(微少粒子状物質)の洗礼を受けた。北京に着いた当日、空港から見た空はどんよりと黒く濁っており、すぐにPM2・5がひどいと分かった。車で市内中心部に向かったが、10メートル先の視界も効かないほどで、交通事故にならないか心配したほどだ。

それから連日、外に出て取材していたせいか、鼻毛が伸びて喉が痛くなり、息をするのも辛いほどで、喉がひりひりして、鼻汁が止まらず、自宅に帰った翌日にダウン。内科で風邪の治療を受け、さらに耳鼻科でも鼻と喉の痛みのせいか、聞こえにくくなった耳の治療をしてもらった。おかげで、毎食後に10種類ほどの薬を飲まなければならなくなったほどだ。

[caption id="attachment_15070" align="alignnone" width="620"] PM2・5に霞む北京の空。まるで白黒写真のようだ(筆者撮影)[/caption]

北京市環境保護観測センターによると、市周辺地域では9月29日、大気汚染が悪化し、PM2・5の1立方メートル当たりの平均濃度が250マイクログラムを超え、6段階の汚染指数で最悪レベルの「深刻な汚染」が観測されたという。この状態は翌日も変わらず、市や中国環境保護局は小中高校などでの戸外での体育活動を中止したほか、一般市民にも戸外での活動自粛や外出の際のマスク着用を呼び掛けたほどだ。

また北京市の発表では、9月のスモッグの日が例年より10日多く例年では最悪の大気汚染状態だったという。やはり、私のような北京の生活に慣れていない外国人は風邪を引いてダウンするはずだ。それにしても、強力なのはPM2・5だ。

中国では大気汚染で、2010年の1年間で、中国全体の死者数の15%にも及ぶ123万人も死亡したと発表されている。PM2・5などの汚染物質が血液に流入するため、呼吸器系にとどまらず、脳や心臓の疾患も増えているためだという。

日本では昨年夏から秋にかけての最大で125都市での大規模な反日デモの影響で、中国への観光客が激減しており、私が北京で会った日本専門の旅行代理店の中国人社長は「4年前の2009年には我社が扱った日本人旅行者は5818人だったが、今年はこれまででたったの528人しかいない。ざっと計算して9割減だ。これでは(経営は)やっていけない」とため息をついていた。

これは多分に昨年の反日デモの後遺症が強いのだろうが、やはりPM2・5などの環境汚染のひどさや危険食品の報道なども影響しているに違いない。「このままでは、中国に来るのはビジネス関係の人々だけで、一般の日本人の中国離れがかなり進んでしまうのではないか。もう転職も考えなければいけないところまで追い詰められている」と北京在住の別の日中旅行関係者も嘆いており、彼らの悩みは深い。