安倍首相は高齢化社会のための「シルバー五輪」も開催せよ(藤本 順一)
2020年東京五輪の開催決定で内閣支持率は急上昇である。
読売新聞が先週末に行った調査では前月比5ポイント増の67パーセント、4月調査以来5ヶ月ぶりに上昇に転じた。また、同調査で五輪開催そのものについても国民の8割以上が「国民に夢や目標を与える」「経済の活性化につながる」として前向きに評価している。
五輪開催をアベノミクスの第4の矢と位置づける安倍首相は13日に行われた経済財政諮問会議で「15年続いてきたデフレ、縮み経済を払拭する起爆剤だ。地域の頑張り、創意工夫を引き出せるよう議論して欲しい」と述べて五輪開催の前景気を煽った。席上、五輪担当相を兼務することになった下村博文文科相が今後の取り組み方針を示した「2020ニッポン再生 夢ビジョンJAPAN」発表。それによると、東京を「国家戦略特区」に指定して医療や教育、都市開発に関する規制緩和を実施、競技場や宿泊施設などの整備には民間資金や経営ノウハウを生かすPFI(民間資金活用による社会資本整備)の導入を検討課題にあげ、さらには五輪開催期間中の安価で安定的な電力供給の確保に向け再生可能エネルギーの増税や原発の再稼働にも言及している。
いわば、安倍首相は七年後の東京五輪を先食いする形で内閣支持率を押し上げたわけだが、少々悪のりが過ぎよう。
総務省が発表した人口推計では15日時点、65歳以上の高齢者人口は3186万人となり、総人口に占める割合が初めて25パーセントに達したそうだ。また近年、高齢者の孤独死は毎年、5000人以上に上っている。
つまり七年後の東京五輪は世界で初めての超高齢化都市での開催となるのだが、経済成長一辺倒の安倍首相や東京都の猪瀬直樹都知事には、この最も基本的で重要な視点が欠けてやいまいか。高齢化社会のあるべき都市の姿を示してこその東京五輪でありスポーツの祭典である。パラリンピックと併せ、シルバーオリンピックの初開催国になるくらいの大胆な発想の転換を求めたい。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】